アメリカの政策金利の利上げや利下げは、世界の金融市場、為替レート、日本を含む各国経済、企業、そして最終的には消費者の日々の暮らしにまで影響を与えます。
円高・円安の変動、輸入価格や株価にも変化をもたらす米国の利下げが為替にどう影響するのか、わかりやすくお伝えします。
金融政策の鍵を握るFOMCとは?
FOMCとは、「Federal Open Market Committee」(連邦公開市場委員会)の略称で、米国の政策金利などの重要な金融政策を決定する会合のことです。
FOMCは日本の「日銀金融政策決定会合」にあたります。
FRB(連邦準備制度理事会:後述)7名の理事(総裁、副総裁含)と地区連銀総裁のうち5名(NY連銀総裁は常駐でFOMC副議長となる、残りは持ち回り)の12名が投票権を持ちます。
残り7名の地区連銀総裁、NY地区連銀副総裁も議論には参加しますが、投票権は持ちません。
FOMCは年に8回開催され、現在の景況判断や政策金利(FF金利)の方針が発表されます。
FRBとは?
FRBとは「連邦準備制度理事会」(Federal Reserve Board)の略称で、FRS(連邦準備制度)の構成機関の一つです。
日本における「日銀(日本銀行)」に相当し、米国の中央銀行制度の最高意思決定機関で、日本語で「連邦準備制度理事会」と呼ばれます。
FRBは金融政策の策定や国内金融機関の監督を行い、雇用の最大化と物価の安定を使命としています。
FRBの理事はFOMCの構成メンバーにもなっています。
米国が利下げするとドル安円高になるの?
一般的には米国が利下げをするとドル安・円高になりやすいです。
ただし、これはあくまで「基本的な構図」であり、実際の為替相場はさまざまな要因で動くため、一概には言えません。
なぜ利下げでドル安・円高になるのか?
金利差の縮小
米国が利下げすると、米ドルの金利が低下します。
日本は長らく超低金利政策を続けているため、日米の金利差が縮小し、ドルの魅力が相対的に下がります。
ドル売りの圧力
利下げは景気刺激策の一環であり、景気後退懸念が強まると「リスクオフ」の動きが出て、安全資産とされる円が買われやすくなります。
ただし、利下げの「仕方」によって反応は変わる
注意すべきポイント
利下げそのものより「今後の見通し」が重要
1回限りの利下げよりも、
「連続利下げがあるかどうか」
が市場に大きく影響します。
予期せぬイベントの影響も大きい
過去には利下げ後に米中対立や金融危機などが起き、ドル円の動きが予想外になるケースもありました
「噂で買って事実で売る」とは?
相場ではよく
「噂で売って事実で買う(Buy the rumor, sell the fact)」
と言われます。
「噂で売って事実で買え」
とも言います。
簡単に言うと
「噂のうちに買っておいて事実が確定したら売れ」
という意味で
本質的には、
「良いニュースに関する噂や予測が広まり始めたら資産を購入、ニュースが正式に発表されたら売る」
ことを意味します。
「噂で買って事実で売れ」とは、あらゆる市場で行われるトレード・投資戦略、あるいはそれによる相場の値動きのことを指します。
ある将来の時点のイベント(金利政策の発表など)、経済指標、決算報告などから将来的な値動きの予想を元にポジションをとり、実際のイベント通過、指標・決算発表でそのポジションを解消することです。
また、
「市場は事実が公表されるよりも先に噂や思惑で動く傾向があり、事実が公表された段階では、すでに『織り込み済み』となっていることが多い」
ということを教示する格言でもあります。
良いニュースへの期待が高まると、トレーダーが事前にポジションを取るため、価格が上昇することが多くあります。
ですが、実際にニュースが報道されると、その出来事の影響は既に織り込まれており、早い段階でトレーダーが利益を確定するため、価格は下落または停滞する可能性があります。
「噂で買って事実で売る」の論理
金融市場は、実際の業績だけでなく、「期待」にも左右されます。
中央銀行の利下げ、企業の好成績、大型新製品の発売など、明るい兆しに関する噂や憶測が表面化すると、トレーダーや投資家は期待に駆られて買いに走ることがよくあります。
こうした集団的な買いが価格を押し上げます。
そして、予想されていたニュースが確認されると、上昇を持続させるような新たな情報は少なくなる可能性が高くなります。
早めに買いを入れたトレーダーは利益確定のために売りを始め、価格が下落したり、値動きが安定したりするすることがあります。
場合によっては、好材料であっても、既に高い期待を上回らなければ、売りにつながる可能性があるのです。
米国アメリカが利下げすると為替はドル安円高?ドル高円安?まとめ
為替は「事実」よりも「期待」と「サプライズ」で動く世界。
利下げが発表されたとしても、その背景や市場の織り込み具合によって反応は大きく変わります。
為替はFOMCの動きも含めて、世界経済全体を見ながら判断することが重要ですね。