お彼岸には「ぼた餅」それとも「おはぎ」?
正しいのはどっち?
春と秋で呼び方が変わる?
違いはあんこの種類?
巷の諸説、解説します!
ぼた餅とおはぎの関係、なぜ二通りの呼び名があるのか?
おはぎとぼた餅とあんころ餅の違いも整理してわかりやすくお伝えします。
ぼた餅とおはぎに違いはあるの?
ずーっと長い間、
「こしあん」が「おはぎ」で、
「粒あん」が「ぼた餅」だと思っていました。
理由は、実家の祖母が作るぼたもちが粒あんだったからです。
ぼた餅・おはぎとは、もち米とうるち米とを炊きあわせ、熱い間に半づきにして丸めて、あんこでくるんだものです。
つまり、ぼた餅もおはぎも共に、もち米とあんこを使った食べ物。
社会人になったある時。
会社の取引先の人が、手土産に、有名なお店のおはぎを差し入れしてくれました。
同僚が、このこしあんを使ったおはぎを
「美味しいぼた餅だねー」
と言った一言がキッカケで、
ぼた餅と呼ぶ派とおはぎと呼ぶ派に分かれ、いろいろ調べたことがあります。
調べてみると、
同僚のように、こしあんを使ったものを「ぼた餅」と言い、
粒あんやきな粉をまぶしたものを「おはぎ」と呼ぶところもあるようです。
うちが真逆だったのか!
かと思えば、私の実家と同じで、
「粒あんがぼた餅」
という人も多くいました。
- こしあんがおはぎ、粒あんがぼた餅
- こしあんがぼた餅、粒あんがおはぎ
- 米粒が残っているのがおはぎ、完全に餅になっているのがぼた餅
- 大きいのがぼた餅、小さいのがおはぎ
とにかくさまざまな説が入り混じってました。
同じ東京でも違います。
どうやら、「おはぎ」と「ぼたもち」に大きな違いがあるわけではありませんが、地域やお店、風習によってちょっとずつ違いがあるようです。
おはぎとぼた餅の明確な違いはどこから?
おはぎとぼた餅は基本的に同じものです。
どちらか一方で呼ばれることが多いんですが、呼び方を時期によって変えることもあります。
また季節だけではなく、大きさ・材料によっても呼び分けられることがあります。
なぜ、呼び方が「おはぎ」「ぼた餅」と二通りもあるのでしょうか。
おはぎの由来
おはぎの「はぎ」は「萩」のことです。
萩は秋の草花。
おはぎとは秋のお彼岸に食べるものの事で、あずきの粒をその季節に咲く萩にに見立てたものなのです。
ぼた餅の由来は?
ぼた餅の「ぼた」は「牡丹」のこと。
牡丹は、春の花ですね。
ぼた餅は牡丹の季節、春のお彼岸に食べるものの事で、あずきの粒をその季節に咲く牡丹に見立てたものです。
呼び方は季節で分けている?
昔の人が、
春はぼた餅、秋はおはぎと、
季節によって使い分けていたことが、呼び方がふたつある由来と言われています。
- 春のお彼岸に食べる場合 : 「ぼた餅(牡丹餅)」
- 秋のお彼岸に食べる場合 : 「おはぎ(お萩)」
四季のある日本らしい呼び方ともいえますね。
ぼた餅の「餅」の由来とおはぎと呼ぶ理由
季節によって使い分けられたことはわかったけれど、ぼた餅の方だけ「餅」がついているのは不思議ですよね。
その由来は、「倭漢三才図会(わかんさんずいえ)」という江戸時代の百科事典にありました。
倭漢三才図会は、大坂の医師だった寺島良安(生没年未詳)が編纂し、1712(正徳2)年に出版された我が国初の本格的な絵入り百科事典です。
その倭漢三才図会に、
「牡丹餅および萩の花は形、色をもってこれを名づく」
とあることから、
牡丹餅が「ぼた餅」となり、萩を丁寧に言って「おはぎ」になったと言われています。
秋のお彼岸「ぼた餅」と「おはぎ」の違い諸説
春はぼた餅、秋はおはぎ。
春と秋での呼び方が違うだけで、「おはぎ」と「ぼたもち」は同じものなのか、というとこれまたそう一概に言えないのです。
ぼた餅とおはぎの呼び分け
地域や家によって、粒あんを「ぼた餅」、こし餡を「おはぎ」と呼ぶところもあります。
上述のように、実家がそうでした。
春はぼた餅、秋はおはぎと言われても、実家も親戚も近所も覚えている限り、秋のお彼岸には「ぼた餅」を食べていました。
季節に関係なく、春・秋ともに「おはぎ」で統一しているところもあります。
お店などは、年中おはぎで通すお店が圧倒的に多いようです。
使う米の種類で呼び分ける
ぼたもち・おはぎは、もち米とうるち米を混ぜて炊いたものを、熱い間に半づきにして丸めて作ります。
この時、
もち米をメインにするものを「ぼた餅」、
うるち米をメインにするものを「おはぎ」と呼ぶ地域もあります。
大きさによって呼び分ける
大きさによって、「ぼた餅」と「おはぎ」を呼び分けるところもあります。
これも春に咲く牡丹の花と、秋に咲く萩の花に通じるものです。
牡丹は大輪で豪華な花が特徴です。
対して、萩は小さく可憐な花。
このことから、
春は牡丹の花のように大きく丸く、
秋は萩の花のように小さく上品に俵型にするとされています。
あんこの種類によって呼び分ける
「こしあん」が「春のぼた餅」、
「つぶあん」が「秋のおはぎ」、
とするところもあります。
春にこしあん、秋に粒あんと、あんこの種類が違う理由は、あんこに使う小豆の収穫時期にあります。
小豆の種まきは春(4月~6月)、収穫は秋(9月~11月)です。
収穫したての小豆は皮までやわらく食べられるので、粒あんとして使います。
逆に、春まで保存した小豆は越冬で皮が硬くなってしまうため、皮を取り除いてこしあんとして使用するのです。
このことから、
春のぼた餅は粒あん
秋のおはぎはこしあん
と、あんこの種類も変わってきます。
まだあるぼた餅とおはぎの違い
あんこで丸めたものが「ぼた餅」で、
きな粉をまぶしたものが「おはぎ」と呼ぶところもあるようです。
また、
餅の状態になるまでついたものを「ぼた餅」、
米粒が残ったものを「おはぎ」とするところも。
ぼた餅とおはぎはあんころ餅と違うの?
あんころ餅は「餡衣餅(あんころももち)」が転じた言葉です。
外側をあんこでくるんだお餅があんころ餅。
伊勢の「赤福」のようないわゆる「あんころ餅」も、ぼた餅・おはぎに似ていますよね。
ぼた餅・おはぎもあんこでくるむため、あんころ餅の一種とも言えますが、あんころ餅は、中身が完全にお餅です。
あんころ餅と、ぼた餅・おはぎの違いは、あんこではなく、中の生地が違います。
ぼた餅・おはぎは、米粒が残る程度についた餅を使うのが一般的。
このことから、
あんころもちを別名「全殺し」「皆殺し」、
ぼた餅・おはぎを別名「半殺し」という言い方もあるとか。
物騒ですね(笑)。
あんころ餅は、関西や北陸地方を中心に夏の土用の入りの日に食べる風習があり、その時期は「土用餅」と言われます。
江戸時代、疲れた旅人が食べやすい様に一口サイズになったとも言われますが、先の赤福や川渡餅など各地で土産菓子としても人気があります。
一方、外側が餅で、あんこを餅でくるんだ大福のようなものを「あんころもち」と呼ぶ地域もあります。
まとめ
ぼた餅・おはぎの呼び方には実にさまざまな定義があります。
調べていくと、呼び方の違いは地域や家のみならず、販売店・メーカーによっては逆転していることもあり、どれも全国共通のものではありません。
いずれにしても、ぼた餅・おはぎは共に季節の風情を感じさせる、日本古来の伝統食。
お彼岸には故人やご先祖さまを偲び、感謝の想いを馳せながら味わいたいものです。