針供養にはどんな意味があるの?
なぜ12月8日と2月8日?
どの神社で行われる?
事始めと事納めって何?
その疑問、解消します!
針供養で豆腐やこんにゃくに針を刺す理由と由来、
どうして針を供養する日ができたのか、
背景も含めわかりやすくお伝えします。
針供養にはどんな意味があるの?
針供養に初めて行ったのは子どもの時。
母の親しい友人がオートクチュールのデザイナーをしていて、お弟子さんたちと一緒に連れて行ってもらったのです。
大人たちが白い大きな豆腐に針を刺すのに驚いて、目を丸くしました。
針供養といっても昔と違って、針仕事を家でする人が少なくなったので、ピンとこないかもですが、服飾業界では当たり前のように行われています。
もちろん、針供養は一般の人も行っていますし、企業や、被服の専門学校の先生や生徒、仕立屋さんや畳屋さんなど、日頃から針に携わる多くの人たちが針供養に訪れます。
針供養とは?
針供養は読んで字のごとく、針を供養する行事。
折れたり、曲がったり、錆びたりして使えなくなった針を、豆腐屋やこんにゃくなどに刺して供養する行事のこといいます。
お役目を終えた針に対する労いと、感謝の気持ちをあらわすとともに、裁縫の上達も祈う行事とされています。
針供養のやり方は?
神社や地域によって多少異なりますが、豆腐やこんにゃくといった柔らかいものに針を刺して寺社に奉納するのが一般的です。
針を豆腐など柔らかいものに刺すのは、これまで硬い生地などを刺してきた針に対し、
「最後は柔らかいところで休んでくださいね」
という気持ちや、供物としての意味があるといわれています。
昔はそれぞれの家庭で針供養を行っていたといいます。
その日は針を使う仕事を休み、折れた針や古い針など使わなくなった針を紙に包んで神社に奉納したり、川に流したりしていました。
地域によっては、この日に芋、大根、焼豆腐、あずき、にんじんなどの煮物料理を食べるならわしもあります。
神社に針供養に訪れた人々は、持ち寄った針を次々と豆腐に刺していきます。
その後、本堂で厳粛な供養が行われます。
神社仏閣によっては針供養塔があり、供養後の針はそこに納めます。
針供養に使われた豆腐は、針を抜かれ燃やされた後、奉納するそうです。
■ 針供養の方法
針供養の方法には、神社で受け付けをして本殿でご祈祷するケースと、本殿前に豆腐などが置いてあり、お参りに来た人が自由に針を刺し参拝するケースがあります。
針供養はいつ行うの?
針供養は12月8日、または2月8日に行われます。
関東では2月8日、関西では12月8日に行うことが多かったようですが、地域に関わらずどちらか一方の日に行うところや、両日行うところもあります。
この日付の違いには、背景にある「事始め・事納め」の捉え方が影響しています。
事始めと事納めと針供養の関係
12月8日と2月8日のことを、「事八日(ことようか)」といいます。
近頃はあまり馴染みがなくなってしまいましたが、昔から事八日には様々な行事が行われてきました。
なぜかというと、この日が事を始めたり納めたりする大事な日とされてきたからです。
「事」を始めるのが「事始め」。
「事」を納めるのが「事納め」。
そして、ややこしいことに12月8日を「事始め」、2月8日を「事納め」という場合と、その逆に、2月8日を「事始め」、12月8日を「事納め」という場合があるのです。
12月8日を「事納め」と呼ぶか「事始め」と呼ぶかは、「事」の考え方によります。
「事」というのは、もともとコトノカミという神を祀るお祭りを表します。
コトノカミを祝うお祭りが12月8日と2月8日の2回あり、「事八日」「事の日」などと呼ばれていました。
このコトノカミが、「年神様」か「田の神様」かで、事始めと事納めの時期が逆転するのです。
年神様をまつる神事の期間と、田の神様をまつって働く人の日常の期間とに分けるとすれば、一方の始まりの日はまた一方の終わりの日になるというわけです。
コトノカミが年神様の場合
年神様は、家々に1年の実りと幸せをもたらすために、高い山から降りてくると考えられている新年の神様です。
正月に門松やしめ飾り、鏡餅を飾ったりするのは、すべて歳神様を心から歓迎するための準備。
「事」をお正月の神事のことと捉える地方では、12月8日の事始めでは、主に新年の準備を始める日とされています
なので、コトノカミが「年神様」の場合、年神様を迎えるために正月準備を始めるのが12月8日の「事始め」で、年越しの神事をすべて納める2月8日が「事納め」となります。
コトノカミが田の神様の場合
2月8日は旧暦でいえば3月の中旬くらい。
寒い冬から陽気も良くなり、農作業の準備を始める時期になります。
田の神様を迎えて、農作業をする人々の日常が始まるのが2月8日の「事始め」で、すべてを終えるのが12月8日の「事納め」です。
「事八日」の針供養
「事八日」には、ふだんお世話になった道具を片付け、感謝する風習があります。
その代表的なのが「針供養」です。
針供養の起源は定かではありませんが、平安時代に貴族の間で行われるようになったと考えられています。
それが江戸時代になると、針の労をねぎらい、裁縫の上達を願うまつりとして広がりました。
当時の針仕事は女性にとって重要な仕事。
そのため、使えなくなった折れた針や古くなった針には、感謝の気持ちを込めて処分したのです。
柔らかい豆腐やこんにゃく、もちに刺し、川に流したり、土に埋めたり、神社に納めたりして供養し、裁縫の上達を願いました。
針供養は上述のように、2月8日と12月8日のどちらか一方の日か、両日に行います。
関西地方では、冬の日本海が強風で荒れ、12月8日あたりにハリセンボン(ふぐの仲間)が打ち上げられることが多かったことから、この日に針仕事を休むようになったとも言われています。
針供養が行われる主な神社
東京で針供養といえば、浅草寺淡島堂が有名です。
針供養は、女性を守ってくださる淡島神(あわしまのかみ)をまつる淡島神社(粟島神社)や淡島堂を中心に、各地の社寺で行われています。
淡島神社で行われる由来は、淡島神社でまつられている神さまが「ハリサイジョ」といわれていることから、「針」の語呂合わせによるという説もあります。
また、いわれなどとは無関係に針供養を行っている神社仏閣もあります。
東日本と西日本の針供養をしている寺社をいくつかあげておきますね。
東日本
- 東京:浅草寺・淡島堂(台東区浅草)TEL 03-3842-0181/2月8日
- 東京:森巌寺・淡島堂(世田谷区代沢)TEL 03-3421-1730/2月8日
- 東京:富岡八幡宮・粟島神社(江東区富岡)TEL 03-3642-1315/2月8日
- 東京:正受院 (東京都新宿区新宿)TEL 03-3341-1416/2月8日
- 神奈川:荏柄天神社 (鎌倉市二階堂)TEL 0467-25-1772/2月8日
西日本
- 和歌山:淡嶋神社(和歌山市加太)TEL 073-459-0043/2月8日
- 大阪:太平寺(大阪市天王寺区)TEL 06-6779-9133/2月8日
- 大阪:大阪天満宮(大阪市北区)TEL 06-6353-0025/2月8日
- 京都:法輪寺(京都府京都市西京区)TEL 075-862-0013 /2月8日・12月8日
- 京都:幡枝八幡宮 針神社(京都府京都市左京区)TEL 075-791-3576/12月8日
針供養のまとめ
針供養は、お世話になった針に感謝し供養する行事です。
折れたり、曲がったり、錆びたりして使えなくなった針を、豆腐屋やこんにゃくなどの柔らかいものに刺して供養します。
12月8日と2月8日に行われるのは、事八日というお世話になった道具を片付け、感謝する風習が背景にあります。
針供養は馴染みがないかもしれませんが、針を使う服飾業界などでは針のご供養も含めて、針仕事が上達するように受け継がれている行事です。
針を持つ機会がなくても、お裁縫はとても身近なもの。
身近なふだん使いのものにも感謝をするという気持ち、大切にしたいですね。