ひじきは栄養豊富でも害があるって本当?
ひじきのヒ素がなぜ身体に悪いの?
妊婦や幼児は食べない方がいい?
その疑問、解消します!
ひじきが危険と言われる理由、
損失余命の意味、
安心な調理方法の手順、
食べてもよい量も含めて、わかりやすくお伝えします。
ひじきは栄養豊富でも害がある?
ひじきは、カルシウム・カリウム・リン・鉄などを多く含んだ食材です。
日本では昔から、
「ひじきを食べると長生きする」
と言われ、伝統的にひじきを食べてきました。
ところが、近年ひじきの安全性が問題視されるようになっています。
わたしの周りでも、ひじきを食べるのを控えているという話をよく聞きます。
ことの発端は、2004年7月、英国食品規格庁が出した勧告です。
この勧告は、
『ひじきは無機ヒ素を多く含むので食べないように』
という注意喚起でした。
その情報が入ると日本国内でも、
「健康に良いとひじきを常備菜にしているけれど大丈夫なの?」
と心配になる人達が増えたのです。
英国の報告に日本の厚生省は?
イギリスの勧告は、ひじきの摂取を避けるように行政指導を行っているカナダの報告を受けてのものです。
日本では健康に良いとされるひじきですが、この勧告がキッカケとなり、日本国内でもひじきの安全性について不安を感じる人が多くなりました。
イギリスの勧告に厚生労働省は、平成16年(2004年)、
『バランスのよい食生活を心がければ健康上のリスクが高まることはない』
としました。
ヒ素が多いひじきは損失余命の食品?
2016年になると、ひじきはWHO(世界保健機構)の『損失余命(Lost Life Expectancy)』の食品に選ばれました。
損失余命というのは、身体に悪影響を及ぼす食事や行動によって、どのくらい寿命が縮まるかを示す考え方です。
生まれたときに満タンの余命が、どのぐらい減っていくのかを表したものですね。
この考え方によると、『ひじきの煮物(小鉢一杯)』の損失余命が58分とされています。
ただ、これには、ひじきを食べることで得られる栄養効果などのプラス面は評価されていません。
また、明確なエビデンスがあるものでもありません。
58分という高い数値が出ているのは、無機ヒ素の含有があるためです。
その後の農林水産省の調べにより、乾燥ひじきを水に戻すと50%、茹で戻すと80%、茹でこぼすと90%の無機ヒ素が減ることが分かっています。
ひじきのヒ素がなぜ身体に悪いのか
無機ヒ素の含有量が多いということで危険な印象を持たれるひじきですが、では、無機ヒ素とはいったいなんなのでしょうか。
ヒ素とは
ヒ素は、自然界に広く存在する元素(元素記号As)です。
土壌や海水にも天然由来のヒ素が含まれています。
地殻中に広く分布しており、火山活動などにより自然に放出されます。
また、火力発電、鉱石・化石燃料の採掘や廃棄物の処理などの産業活動に伴って、人為的に環境に放出されます。
環境中に放出されたヒ素は、大気、水、土壌と生物圏を循環するため、あらゆる生物がヒ素を含有しています。
ヒ素は私たちが生活する環境に普通に存在するもの。
なので、ひじきなどの食品や飲料水が微量のヒ素を含んでいるわけです。
■ ヒ素の毒性
ヒ素の毒性はヒ素がどのような物質と結びついているかによって大きく異なります。
ヒ素は大きく分けると、有機ヒ素と無機ヒ素に分かれています。
危険性が特に高いのが、無機ヒ素です。
無機ヒ素を一度に大量に取ると、腹痛・下痢・おう吐・麻痺などを起こして、死にいたることもあります。
また長期間、少量の無機ヒ素を摂り続けた場合、神経障害・皮膚障害・肝臓障害が現れることや、発がん性や催奇形性があることが知られています。
ちなみに、無機ヒ素について、JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会)は、PTWI(暫定耐容週間摂取量)を0.015mg/kg体重/weekと設定しています。
PTWIというのは、一生涯摂り続けても影響が現われない、一週間あたりの摂取量です。
ひじきのヒ素の含有量は?
昆布やわかめ、のりなどの海藻類に含まれているヒ素は、身体にはあまり影響がないとされえちる有機ヒ素が多く含まれます。
ですが、ひじきに含まれるヒ素は無機ヒ素。
江東区が行った調査によると、スーパーなどで販売されている乾燥ひじき10検体を検査したところ、ひじきには1キログラム当たり34~117ミリグラムのヒ素が含まれていました。
乾燥ひじきのヒ素含有量(平均値)は、
- 総ヒ素・・・82.5mg/kg
- 有機ヒ素・・・19.4mg/kg
- 無機ヒ素・・・63.1mg/kg
(単位はひじき1キログラム当たりミリグラム)
国産・韓国産・中国産など、ひじきの産地による違いはありませんでした。
わかめなど他の海草に含まれるヒ素量は、おおむね1キログラム当たり10ミリグラム以下なので、ひじきには多く含まれていることになりますね。
ひじきは食べない方がいいの?
前述のように、日本の厚生労働省は、
『バランスのよい食生活を心がければ健康上のリスクが高まることはない』
としており、
『海藻の摂取による健康被害の報告事例がない』
ともいっています。
ひじきは古来から食べられていますが、今のところ、ひじきによる健康被害は知られていません。
ひじきに含まれる何らかの成分が、無機ヒ素の毒性を弱めると示唆する報告もあります。
また、ひじきに含まれる無機ヒ素の毒性もはっきりしていません。
ひじきの安全な調理方法はある?
ひじきには、無機ヒ素が多く含まれています。
ですが、イギリスの勧告では調理法には言及していませんでした。
調理法によって、ひじきに含まれるヒ素が水に溶出しやすくなることがわかっています。
わたしたちが伝統的に行っているひじきの調理法、
2. 戻した後に水洗いをし、水気を切る
3. 茹でる
という工程で、9割以上のヒ素を取り除くことができると言われています。
これは前述の農林水産省の調査とも一致していますね。
- 乾燥ひじきはたっぷりの水で30分以上水戻ししてから調理する。
- 水戻しに使った水は、調理には使わない。
- 水戻しした後は、ボールに入れた水で2~3回洗い、よく水気を絞る。
- 茹でるときは水戻ししてから茹でる。
ひじきはどれくらいの量なら食べても大丈夫?
WHO(世界保健機関)は、1週間に摂取しても健康に影響がない『無機ヒ素の量』を定めています。
厚生労働省はこの数値から計算し、体重50kgの人が1日当たり4.7gまでの乾燥ひじきなら、毎日食べても問題ないとしています。
4.7gといえばひじき煮の小鉢で、およそ1/2杯。
お弁当や突き出しで出てくるひじきの量程度なら問題ないですね。
ひじきは鉄・ヨウ素・カルシウム・リン・ビタミンA・ビタミンB2・食物繊維などが豊富な食材です。
極端に多く食べることがない限り問題ないので、上手に利用するといいですね。
ひじきのヒ素は幼児に影響するの?
一般的に子供は化学物質への感受性が高いと言えます。
大人に比べると幼い子供の解毒機能は未成熟。
身体的に未発達な幼児は、ヒ素などの有害物質の解毒や排出がうまくいかないことがあり得ますよね。
英国食品基準庁は、発がん性について子供のリスクが大人より高いことはないと述べています。
ですが、未成熟な子供の身体のことを考えると、あえてひじきを食べさせる必要はないのでは、と思います。
ひじきは妊婦に影響するの?
厚生労働省は、妊婦にひじきを食べることを禁じてはいません。
過剰に摂取しないよう注意喚起はしていますが、食べていけないとは言っていないのです。
一方、無機ヒ素には催奇形性や妊娠障害を起こす作用が知られています。
これらの毒性は、母体に毒性が現われる程度の摂取量で現われるとされています。
ひじきを多く食べたことによる健康被害は報告されていませんが、この先ないとも限りません。
これから妊娠予定があったり、妊娠中の場合は、個人的にはひじきを食べるのはやめておいた方がよいと思います。
ひじきは栄養以上にヒ素の害がある?なぜ妊婦は食べない方がいいの? まとめ
ヒ素が多いとされるひじきは、英国とカナダで食べないようにという勧告が出て、損失余命の食品にも選ばれました。
ですが、これらにはひじきを食べることで得られる栄養効果などのプラス面は評価されていませんし、明確なエビデンスがあるものでもありません。
ひじきに限らず、どんな食材にも、多かれ少なかれメリットとデメリットがあります。
ひじきにヒ素が含まているのは事実ですが、神経質になりすぎるのも身体によくありません。
ひじきは鉄・ヨウ素・カルシウム・リン・ビタミンA・ビタミンB2・食物繊維などが豊富な食材です。
常識的な範囲で、おいしくいただけるといいですね。