スキージャンプのK点とはどんな意味?
ヒルサイズ(HS)との違いは?
超えると危険なのはどっち?
その疑問、解消します!
K点の「K」の意味が変わった理由、
HS超えの時の処置、
各国の主なジャンプ競技場のK点とHSの比較も含めて、
わかりやすくお伝えします。
スキージャンプのK点とはどんな意味?
スキーのジャンプ競技を見ていると、
「K点を大きく、大きく超えています!」
「2本めはK点に届かず、しかしまだ入賞は期待できます!」
とアナウンサーが絶叫する場面がよくあります。
スキージャンプの実況でよく聞かれる「K点」という言葉、
何やら、「K点」を超えると飛距離的に良いイメージがあることはわかりますが、
そもそもK点の「K」にはどんな意味があるのでしょうか?
K点とはなんなのか
K点の「K」は、ドイツ語で『建築基準点』を意味する
「Konstruktionspunkt(英: construction point)」
の頭文字です。
つまり、K点とは、そのジャンプ台の建築基準点のこと。
建築基準点というのは、その位置を境にして着地滑走路の傾斜曲率が変わる地点で、
ジャンプ台の着地斜面の下部に位置し、赤い線が引かれています。
選手が飛ぶジャンプはK点を基準として飛距離を計算します。
K点は、何メートルまで飛行可能な設計をしているジャンプ台であるかを示しており、
K点を越えても安定した着地ができる様に設計されています。
K点を超えるとどうなるの?
ジャンパーの着地がK点を越えると、得点が加算され、越えられないと減点されます。
現在の採点法ではK点が飛距離の基準なので、
K点に着地した飛躍に対し60点が与えられます。
もちろん、ジャンプ台の規模によってK点は異なります。
一般的にノーマルヒルでは1メートルにつき2.0点加算されて、
ラージヒルでは1メートルにつき1.8点加算されます。
着地区域の開始点はP点(独: Punkt, 英: P-point)と呼ばれ、青い線が引かれています。
スキージャンプのK点とヒルサイズ
K点の他に、スキージャンプの実況でよく聞く言葉に、
「ヒルサイズ(HS)」
というものがあります。
ヒルサイズ(HS:Hill Size)は、
『そのジャンプ台でこれ以上の距離を飛ぶと緩斜面になって着地が危険になる』
という意味です。
要は、
「これ以上飛ぶと危険ですよ」
という警告地点です。
ジャンプは飛距離が長くなれば長くなるほど、競技場の斜面が緩くなるので着地の衝撃がきつくなるんですね。
ヒルサイズ(HS)はK点より遠くに設定され、2004~2005年のシーズンから導入されました。
K点がヒルサイズに変わった?
昔はK点が、
「これ以上飛ぶと危険ですよ」
という、『越えると着地が危険』という印でした
先述のように、K点はドイツ語で『建築基準点』を意味する
「Konstruktionspunkt(英: construction point)」
の頭文字です。
ですが、以前はドイツ語で、
「Kritischer Punkt英: critical point)」
を指すものだったのです。
これは「極限点、臨界点」などと訳されます。
「これ以上飛ぶと危険ですよ」
という警告を示すものだったK点が、
現在はヒルサイズ(HS:Hill Size)がその警告地点になっているというわけです。
現在のK点は、
『60点を基準として増減させる飛距離点の基準』
という役割です。
なぜK点がヒルサイズに変わったの?
K点が極限点を表していた頃は、
大会運営者は競技中でも、
最も飛距離の長い選手でも着地地点がK点を超えないように、
スタート地点の高さを変えたり、
助走路の長さを調節して設定していました。
ですが、選手のテクニカルな部分(滑空技術や着地技術など)や、
着用するウエアやプロテクターなどが進歩するにつれ、
固定されているK点を超える「K点越え」のジャンプが可能になり、
極限点という意味でのK点は、事実上の意味をなさなくなっていったのです。
大ジャンプを求める観衆に配慮して、ジャンプ台の設計が変更されたことも「K点越え」が増えた要因です。
そうして、2004年、W杯などの国際試合を統括管理する国際スキー連盟(FIS)が、安全に着地できる最大距離の目安としてヒルサイズを導入します。
これによって、極限点を意味するK点はなくなったわけです。
現在は、これ以上飛ぶと危険という地点はHS(ヒルサイズ)で表され、K点と併記されています。
ヒルサイズ(HS)を超えるとどうなるの?
通常、ノーマルヒルやラージヒルでは、K点の10メートル以上先にヒルサイズ(HS)が設定されています。
選手がヒルサイズ(HS)を超える飛行をすると、審判が安全に配慮して、『危険』のため競技の続行について審議されます。
飛び過ぎによる競技中断が生じるんですね。
スタート位置を下げて飛距離を抑制し、その分加点するとか、
場合によっては競技を中断 して向い風が収まるのを待つとか、
競技自体を中止するなどの処置がとられます。
ときには、実績のない選手がヒルサイズ(HS)を超えるジャンプをすると、
審議の結果、
それまでに飛んだ選手のジャンプもすべてキャンセルとなって、
ゲートを下げて競技をやり直すということも、稀にあります。
というのは、スキージャンプの競技は後ろの順番になるほど強い選手が飛ぶので、飛びすぎる可能性がより高くなり危険だからなんですね。
k点と同様、ヒルサイズ(HS)はそのジャンプ台によって異なります。
また、K点距離が同じジャンプ台でも、ジャンプ台の環境によってヒルサイズ(HS)は設定されるので、異なることがあります。
現在のジャンプ台のヒルサイズ(HS)の斜度はノーマルヒルで31度、ラージヒルで32度となっています。
たとえば、札幌市にある大倉山ジャンプ競技場の場合は、K点=120メートル。
120mを越えれば得点、
120mに届かなければ減点となります。
そして、大倉山のヒルサイズ(HS)は134メートルです。
134メートルまでが安全性が確保された飛距離となり、
134メートルを超えると危険となります。
参考までに、各国の主要なジャンプ競技場のK点とヒルサイズを表にまとめました。
K点とヒルサイズの単位はメートルです。
スキージャンプのK点とはどんな意味?HSヒルサイズとの違いは? まとめ
K点とは、そのジャンプ台の建築基準点のこと。
K点の「K」は、ドイツ語で『建築基準点』を意味する
「Konstruktionspunkt(英: construction point)」
の頭文字です。
ジャンパーの着地がK点を越えると得点が加算され、
届かなければ減点となります。
ヒルサイズ(HS:Hill Size)は、
「これ以上飛ぶと危険ですよ」
という警告地点です。
昔はK点がヒルサイズ(HS:Hill Size)の役割をしていましたが、
現在のK点は、
『60点を基準として増減させる飛距離点の基準』
という役割です。
ヒルサイズ(HS)は、ジャンプ台の規模を表すものでもあります。
冬季五輪の種目となっているのは、ノーマルヒルとラージヒルですが、
現在スキージャンプのW杯(男子)で行われているのは、ラージヒルとフライングヒルです。
フライングヒルというのは、K点170m、ヒルサイズ185m以上のジャンプ台を使用して行われる競技で、
世界でも以下の5か所のみで行われています。
- プラニツァ(スロベニア)
- ビケルスン(ノルウェー)
- オーベストドルフ(ドイツ)
- ハラホフ(チェコ)
- バート・ミッテルンドルフ(オーストリア)
表でもご紹介したスロベニアのプラニツァは、世界最大級のスキージャンプ競技場です。
残念ながら、今のところ日本にはフライングヒルのジャンプ台はないので、ぜひ、ワールドカップでチェックしてみてくださいね。