日本の学校が4月始まりになった理由は?
明治の頃は9月だった?
海外の国の入学や新学期は何月?
その疑問、解消します!
入学式と新学期の時期が4月になった時代背景、
世界の国の新学期一覧、
主要国との入学式&始業式の比較も含めて、
わかりやすくお伝えします。
日本の入学は9月だった?
4月といえば入学シーズン、
日本全国の学校で新学期が始まる時期でもありますね。
でもこれ、日本では4月入学が当たり前ですが、世界的には9月入学の国が多く見受けられるのです。
実は日本も以前は9月入学だったことがありました。
日本に学制が敷かれた明治の頃は、学校への入学時期は9月でした。
明治の文豪、夏目漱石の小説『三四郎』では、主人公の三四郎が大学入学のため熊本から東京へ出てくるシーンがあります。
そこでは、
と書かれています。
三四郎が入学した大学は東京帝国大学。
今の東京大学、東大です。
三四郎は上京する列車で髭を濃く生やした男と乗り合わせ、水蜜桃(すいみつとう)を勧められて一緒に食べます。
水蜜桃は桃の一種、夏が旬の果物です。
残暑が厳しい頃の水蜜桃は、どんなにおいしかったことだろうと、桃好きのわたしにはとても印象深い場面でした。
『三四郎』は1908年(明治41年)、朝日新聞に連載された新聞小説で、翌年1909年(明治42年)の5月に刊行されています。
明治の前は大正、
大正は15年間で、その前は江戸の時代ですが
そもそも江戸時代には、寺子屋や私塾などでは特に入学の時期というものはありませんでした。
当時は子どもといえども、家の大切な労働力だったこともあり、入学時期はばらばらで、随時入学というスタイルでした。
勉強の進み具合もそれぞれに異なっていたので、全員が一斉に入学したり進級したりするという考え方自体がなかったんですね。
それが明治になって、政府によって学制が敷かれて入学時期は9月となったのです。
1878年(明治11年)、日本で最初の国立大学となった東京帝国大学(現在の東大)ができます。
この時、日本も西洋にならって9月始まりで8月終わりとなる「学校年度」という制度を作り、
生徒が一斉に入学して一斉に進級するという仕組みが導入されました。
その9月入学がなぜ4月入学になったのかというと、当時の日本の主産業が大きく影響しています。
日本の学校が4月始まりになった理由は?
日本の学校が4月始まりになった背景には、国の「会計年度」が関わっています。
「会計年度」とは歳入・歳出の区切りとされる期間のことで、通常は1年を1会計年度としています。
この「会計年度」が4月始まりの3月終わりだったんですね。
『明治財政史』という資料によると、
明治元年(1868年)までは「旧暦1月~12月」で会計を区切っていましたが、
明治2年(1869年)に国が官公庁が予算を執行するための「会計年度」の規定を設け、「旧暦10月~9月」としました。
その後、新暦に改暦されると、「1月~12月」、「7月~6月」などと変更があり、
明治19年(1886年)に「4月~3月」の会計年度になって現在に至ります。
会計年度が4月始まりになった理由は?
「会計年度」が4月始まりになった主な理由は、税金の収入源の問題です。
この「会計年度」というのは、もともと日本の主産業である稲作を基準としたものでした。
当時の日本は農家が多く、政府の主な税金の収入源はお米でした。
お米の収穫時期は秋ですよね。
秋に収穫したお米を現金に換えて納税するわけですが、それにはそれなりの時間がかかります。
「会計年度」の始まりを1月にすると、納税による政府の予算編成が間に合わなくなるので、4月にするほうがタイミングが良かったわけです。
また、この頃、世界で最も経済力を誇っていたイギリスの会計年度が4月でした。
そのため、日本にとって重要な同盟国であるイギリスにならって会計年度を4月にしたという経緯もあります。
こうして国の会計年度は、財政法という法律で「4月1日から翌年3月31日まで」と定められ、現在に至っています。
◇ 年度について詳しくはこちらをどうぞ
・年と年度の違いは? 新年度や新学期が4月始まりなのはなぜ?理由は?
会計年度と学校年度の統一
学校年度では9月入学が主流だった明治時代の日本ですが
明治の中期はさらに西洋に追いつけ追いこせと、国の経済力や軍事力を高めようとする富国強兵政策の影響が色濃くなっていきます。
政府の会計年度が4月始まりの3月終わりになったことや、
軍隊の入隊届開始が4月になったこともあり
国は会計年度と学校年度の統一を積極的に指導するようになりました。
学校としては国から補助金をもらっている手前、学校運営に必要なお金を調達するには国の会計年度に合わせないと不便なことになります。
このような経緯があって、小学校や師範学校の入学時期も4月へと変わっていくことになりました。
大正時代に入ると、国の方針で高校や大学も4月入学になり、
昭和になるとほぼすべての学校に4月入学が定着していきました。
日本の入学が4月なのは教育の観点からではなくて、国の事情によって定められたものなんですね。
海外の新学期は何月?
世界に目を向けると、日本のように学年のスタートが4月というのは少数派です。
世界各国の新学期の時期を調べてみると、やはり9月スタートが集中しています。
主な国の新学期をまとめてみました。
- 1月 …… シンガポール
- 1月末~2月初め …… オーストラリア
- 1月末~2月初め …… ニュージーランド
- 2月 …… ブラジル
- 3月 …… 韓国
- 3月 …… アルゼンチン
- 4月 …… インド
- 5月 …… タイ
- 6月 …… フィリピン
- 8月 …… ドイツ
- 9月 …… アメリカ
- 9月 …… カナダ
- 9月 …… イギリス
- 9月 …… イタリア
- 9月 …… スペイン
- 9月 …… オランダ
- 9月 …… ベルギー
- 9月 …… ブルガリア
- 9月 …… トルコ
- 9月 …… イラン
- 9月 …… エジプト
- 9月 …… チュニジア
- 9月 …… モンゴル
- 9月 …… ロシア
- 9月 …… 中国
- 9月 …… 台湾
- 9月 …… ベトナム
- 10月 …… カンボジア
- 10月 …… ナイジェリア
- 10月 …… セネガル
同じ国内でも地域や学校によっては異なりますが、世界のスタンダードという点ではやはり9月入学ですね。
夏休み明けから新学年がスタートしています。
日本でもインターナショナルスクールが9月スタートです。
インターナショナルスクールに通う生徒は、将来的には海外の大学を目指す生徒が多いこともあり
そうした海外の大学と入学時期がズレないように秋始まりになっています。
ちなみに海外の学校では日本のような「入学式」や「始業式」がないところも多くあります。
アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダといった国々では、日本のような入学式はほとんどありません。
いずれの国も入学の際は簡単な事務手続きとクラス発表、学校生活のガイダンスを行うくらいで終了です。
日本のように親が着飾って式典に参加することもなく、ごくあっさりと学校生活が始まります。
日本の学校が4月始まりになった理由は?海外の新学期は何月か一覧で! まとめ
日本に学制が敷かれた明治の頃は、学校への入学時期は9月でした。
それが稲作をもとに「会計年度」を4月始まりとしたことや、
当時の経済大国であるイギリスの会計年度が4月だったこともあって
政府が会計年度と学校年度の統一を図っていった結果、
学校の新学期が4月始まりの3月終わりとなり今に至っています。
世界の新学期を見てみると、9月入学&新学期というのがスタンダードです。
日本から海外に留学する場合や海外から日本に留学する場合、
また海外から帰国して日本の学校に戻る場合も、
日本の新学期が4月開始というのは、学生に半年間の空白が発生してしまいますね。
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