雛人形に五人囃子がいる意味と役割は?
お雛様の五人囃子の持ち物は何?
五人囃子の並べ方で正しい順番は?
その疑問、解消します!
雛壇飾りの三段目の五人囃子の由来、
なぜおかっぱ頭なのか、
楽器の役目とおぼえやすい並べ方も含め、わかりやすくお伝えします。
雛人形に五人囃子がいる意味と役割は?
ひな祭りに飾る雛人形の中でも、おかっぱ姿のかわいらしい5人組の五人囃子は、その姿からほっこりとした雰囲気を与えてくれる存在です。
段飾りの場合には三段目に飾られます。
五人囃子がセットされているお雛様は、三段飾り以上の高価なひな飾りになりますが、雛人形が増えると華やかさが増すので楽しさも倍増ですよね。
五人増えて十人飾りになるだけでも、かなり豪華なお雛様になります。
わたしが子供の頃、実家に飾られていたのは祖母の代から引き継いでいる古いお雛様でしたが、五人囃子の5人はみんながおかっぱではなく、それぞれ髪型が違うものでした。
桃の節句の時期、近所の女の子の友だちの家に遊びに行くと、どの家のお雛様も、五人囃子の髪型は5人共お揃いのおかっぱでした。
なぜか、子供心に五人囃子は五つ子なのだと思い込み、家に帰って母親に、
「どうしてお雛様に五つ子がいるの?」
と尋ねて、キョトンとされたことがあります(笑)。
五人囃子の正体は?
当然ですが、五人囃子は五つ子ではありません。
五人囃子は元服前の少年たちで構成されています。
元服というのは、男子が成人し、髪形や服装を改め、初めて冠をつける儀式のこと。
今で言う、成人式と同じような意味です。
つまり、元服は世間から大人としてみなされる儀式ですね。
なぜ五人囃子が元服前とわかるのかというと、その髪型です。
元服の儀式をする前は、髪の毛を結びません。
いくつの時に元服の儀式が行われるかは、時代によっても違ってくるのですが、雛人形が生まれた平安時代でいえば、元服はだいたい12~16歳だったと言われています。
成人式と同じような意味と述べましたが、実際、年齢的には子供、少年です。
五人囃子は三角にとがった侍烏帽子(さむらいえぼし)を被っています。
五人囃子の「囃子(はやし)」とは?
五人囃子に含まれている「囃子(はやし)」は、「映えるようにする」「ひきたてる」「はやし立てる」という意味の『はやす』から生まれた言葉です。
囃子は日本の伝統文化である『能(のう)』に使われる言葉のひとつ。
囃子は、場を盛り上げ、音楽によってご縁を運んでくる意味合いがあると言われています。
五人囃子の役割とは?
五人囃子がはやしているのは、能楽です。
能楽は、ユネスコ無形文化遺産でもある日本の伝統文化で、 室町時代から600年以上受け継がれてきた日本を代表する舞台芸術。
能楽は、江戸時代には「武家の式楽」として確立します。
能楽を簡単に言えば、能面を用いる音楽劇のこと。
その能楽の音楽を担当するのが五人囃子なのです。
つまり、元服前の少年たち5人で構成された楽団が五人囃子、今でいうバンドですね。
能楽は、「シテ方」「ワキ方」「地謠(じうたい)」「囃子方(囃子方)」で構成されています。
このうちの「地謠」1人、「囃子方」4人で構成されるのが、五人囃子です。
雛人形の設定は、平安時代の宮中の結婚式を模したものです。
つまり、五人囃子はそれぞれの楽器で音楽を奏で、結婚式の場を盛り上げているのです。
お内裏様とお雛様の 『結婚式の祭り囃子』を演奏しているのが五人囃子というわけです。
五人囃子は、お内裏様とお雛様の晴れの日である結婚式のために、日頃から練習してきた成果を披露して、喜んでもらうのが使命です。
そして、五人囃子が奏でる楽曲は、お内裏様とお雛様への結婚祝いでもあるのです。
雛人形の五人囃子の持ち物は何?
前述のように、雛人形は平安時代の結婚式の様子を表したものですが、五人囃子に限っていえば、江戸時代の装備をしています。
ひな人形が今の形になったのは江戸時代。
江戸で現在のひな人形の形が成立したとき、京都式の官女などに、江戸式の五人囃子を加えたという経緯があるのです。
つまり、雛人形のうち、五人囃子だけは江戸式のものなんですね。
すべてが京都式の場合は、五人囃子ではなく、『五楽人』で雅楽を奏でます。
ここでは江戸式の五人囃子を見ていきますね。
五人囃子の持ち物は、向かって左から、
- 「太鼓(たいこ)」
- 「大鼓(おおつづみ)」
- 「小鼓(こつづみ)」
- 「笛(ふえ)」
- 「謡・謡い手(うた・うたいて)」
となっています。
太鼓(たいこ)
太鼓(たいこ)は、いわゆる締太鼓のことです。
締太鼓というのは、張った皮を緒で胴に固定し、張りを強めたりゆるめたりして調子を合わせる太鼓のこと。
構造的には鼓と一緒で、四拍子のリズムを主導する役割を担っていますが、音は響かせません。
太鼓は能楽では、神・霊・鬼畜といった、非人間的なものが登場する場面や怪異的な内容の曲のみに使われます。
座った姿勢で、両手でバチを構えています。
大鼓(おおつづみ)
桜の胴に、表と裏で2枚の馬の革を張り、『調緒(しらべお)』という麻ひもで締め上げた楽器が大皷(おおつづみ)です。
材質や構造はほぼ「小鼓」と同じで、ひとまわり大きいのが太鼓。
音色の種類は、右手の打ち方によって分けます。
五人囃子では、立ち姿勢です。
楽器を左手で持ち、右手で叩く楽器なので、右の掌が横を向いています。
小鼓(こつづみ)
小鼓(こつづみ)は、小ぶりの太鼓で、肩に担いで叩きます。
楽器の材質や構造は大鼓とほぼ同じで、大きさがひとまわり小さいのが小鼓です。
調緒があり、しぼると音が調整できて、大鼓よりも柔らかい音を出します。
立った姿勢で、楽器を右肩に担ぎ、右手で打ち込もうとしています。
笛・能管(のうかん)
笛(能管)は、竹から作られた楽器です。
笛は唯一のメロディ楽器ですが、能楽では主にリズムを刻む奏法で使われます。
また管内に細い竹を1本はめ込んでいるので、『ヒシギ』と呼ばれる鋭い最高音を出すことができます。
座った姿勢で、両手を前に出しています。
飾る時は、左右の手に笛を通します。
謡(うたい)
謡は能の声楽部分、ボーカルにあたります。
ボーカル担当なので、楽器を持たず右手に扇を持っています。
扇は持たない場合もあります。
座った姿勢で、両手を膝にそえています。
雛人形で五人囃子を並べる順番
雛人形を飾る時、
「五人囃子はどういう順番だったかしら?」
と悩んでしまうこともあるかと思います。
わたしは五人囃子の並べ方を、
『向かって左から楽器が大きい順番に並んでいる』
と覚えています。
前述のように、五人囃子は、演奏を担当する囃子方(はやしかた)4人と、声楽を担当する謡い手(うたいて)1人に分かれています。
まず、雛人形に向かって左側から太鼓を置いていきます。
そして次に大鼓、小鼓、笛、謡、という順番になっています。
五人囃子は向かって左から
「太鼓」→「大鼓」→「小鼓」→「笛」→「謡」
の順で飾ります。
雛人形に五人囃子がいる役割は何か持ち物の意味とお雛様で並べる順番 まとめ
五人囃子は、元服前の少年たち5人で構成された楽団、今でいうバンドです
お内裏様とお雛様の 『結婚式の祭り囃子』を演奏しているのが五人囃子。
それぞれの楽器で音楽を奏で、お内裏様とお雛様の結婚式の場を盛り上げているのです。
五人囃子は、お内裏様とお雛様の晴れの日である結婚式のために、日頃から練習してきた成果を披露して、喜んでもらうのが使命です。
そして、五人囃子が奏でる楽曲は、お内裏様とお雛様への結婚祝いでもあるのです。
雛人形のうち、五人囃子だけは江戸式のもの。
五人囃子の持ち物は、向かって左から、
「太鼓(たいこ)」
「大鼓(おおつづみ)」
「小鼓(こつづみ)」
「笛(ふえ)」
「謡・謡い手(うた・うたいて)」
となっています。
五人囃子は、担当している楽器を持ちやすいように、それぞれ手の位置や手の向きが異なっています。
楽団の五人囃子は、親王の結婚式の盛り上げ役。
メンバーそれぞれの役割や華やかな宮中の結婚式を想像しながら、雛人形の飾り付けをするのも楽しいですね。