振袖には年齢制限が由来から魂振りにみる袖を使う言葉と慣用句

結婚式に振袖を着るかどうかで悩んでいるあなた、実は振袖には暗黙の年齢制限が。まずは振袖の由来を知ってから決めては?未婚の女性は若い女性に限るのか?男女の恋愛フッたフラれたも振袖から。魂振りルーツの「袖」にまつわる言葉と慣用句もご紹介します。

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振袖の名前の由来は?

成人式といえば華やかな振袖姿が思い浮かびます。

その振り袖を巡って先日友人たちとちょっとした議論になりました。
発端は31歳の友人が振り袖で自分の兄の結婚式に出席するという話から。

30才って振袖限界の境目なんで微妙なところです。

「やめとけ。着たいんなら着ればだけど自分だったら絶対着ない」

が6人中5人。
その中でも “絶対” は超強調したのは私を含め全員。
残る一人は、

「着なよ、もったいない。最後の振り袖かもよ」

あんたは友だちをハメるのか、イタい姿を晒させるのか、と詰め寄られても賛成派のともは屈せず、着ていけとマジ顔で勧めていました。、

「だって振袖以外に未婚の第一礼装が無いじゃん」

おっしゃるとおり。
晩婚の時代にもかかわらず、現状は未婚の第一礼装は振袖のみ。
だから、現時点では格式の上で正しいのです。

◇着物の格については詳しくはこちら。
 新年初詣に着物なら種類と色で失敗しない選び方と小紋あれこれ

 
ただですね。
皇室や伝統芸能や芸能界は別にして、一般的には年増の振り袖と笑われる可能性は果てしなく大きいんですよ、30過ぎてると。

格式を重んじたいなら何も振袖ではなく、振袖と同格の紋付の色留袖を着るって手もあるんだけど、本人が着ていきたいというのであれば好きにさせるしかないわけで。

振り袖を着るのは親の後押しも有るからってことなんだけど、口さがない我々から、

「独身アピールか」

と詰め寄られた当の本人はシレッと、

「それもある」

というので、もう好きにしろって感じでお開きに。
そもそもの振り袖の意味が段々わからなくなってきました。。。

 

〈そもそも振袖とは?〉

振袖とは、袖の長い着物のこと。
そんなことは誰もが知っているところですが、意外にその歴史は古く、飛鳥時代頃には振袖の原型が生まれ、江戸時代に現在の振袖に近い形に変化したといわれています。

明治以降、未婚女性の第一正装として定着。
袖丈によって大振袖・中振袖・小振袖があります。

振り袖は未婚の女性だけが着ることができる衣装の中で、最も豪華な正礼装。
着物のルールは面倒なくらいあるんだけど、シングル女子ならコレを着れば間違いなし! というのが振袖です。

 

〈振袖の年齢と賞味期限〉

ルールから言えば未婚者である限り、振袖に年齢制限はないわけです。
が、実際には振袖には年齢制限というか賞味期限があります。

振袖に限らず着るものに対して自由に考える人も増えていますが、一般的に、30歳を過ぎて「振袖を着る」ことが「非常識」だと考える人は多いですね。

これはそういうふうに教えられてきた中高年や、その人たちの考えを受け継いだ子供たちがいるためです。

周りを気にすることと周囲に合わせることは違いますが、大切なのはそのお祝い事にふさわしいかどうか。

マナーとしてふさわしいかどうかを考えてみてくださいね。

振袖を楽しみたい30代前後は、落ち着いた色合いにして、お祝いの席にふさわしい、おめでたい模様の着物を選ぶといいと思います。

 

振袖の名前の由来は魂振りから

袖の長い着物が振り袖、この振袖という名前は、

「(長い)袖を振る」

ことに由来しています。

昔の日本には、「魂振り(たまふり)」という神事がありました。

古代の人々は空中に多くの目に見えない神霊(神さま)がいるとして、空気を揺らすことで、神霊(神さま)の世界に自分の意思を伝えることができると考えたのです。

空気を揺らす(振る)ことによって、自分に好意のある神霊(神さま)を呼び寄せたり、厄を払ったりできるとして、古代の人々は布を振ったり、銅鏡や銅剣などの呪物を振ったり、鈴などを振ったりして魂振りを行いました。

 
■現代にも残る「魂振り(たまふり)」

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今、多くの神社には、拝殿の中央、ちょうど賽銭箱の真上あたりに、銅や真鍮製の大きな鈴が吊られていますよね。
この鈴に添えて麻縄や、紅白・五色の布などを垂らして、参拝者はこれを振り動かして鈴を鳴らし、お参りをします。

これは神社の参拝に受け継がれた魂振りのひとつです。
「振る」という行為の呪術的な意味がこめられています。

 
ちなみに神社で大きな鈴(社頭の鈴)を鳴らすのは、鈴の清らかな音によって参拝者を敬虔な気持ちにするとともに参拝者を祓い清め、神霊(神さま)の発動を願うものと考えられています。

「神さま、私がお願いに来ましたよ~」

と、神さまにアピールし、御出座をお願いするためです。

 
「魂振り(たまふり)」に話を戻しますね。
呪術的な意味を持つ「魂振り(たまふり)」は、やがて神霊(神さま)に対してだけではなく、人に対しても行われるようになっていきます。

好きな人を振り向かせたり、誰かに自分の思いを伝えたいと願う時に袖を振るようになり、『万葉集』には、愛する人に向けて袖を振る歌が数多く残っています。

魂振りは一種の求愛のサインでもあるわけです。

有名なところでは額田王の、

「茜さす紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る」

この歌は、広く知られるところです。

恋しい人の気持ちを引き寄せる力もあると思われていた袖振りですが、相手が出来て「振り」を留めたから留め袖というわけです。

結婚後は振り袖を着ないという決め事も頷けますよね。

振る行為には厄払いや神さまのご加護で安寧を祈願する意味もあるので、旅に出て行く人を見送る時には手を振ったり、袖を振ったり、体の一部を振ることによって魂振りの呪力が相手に及ぶことを願い健康と無事を祈りました。

私たちが、

「いってらっしゃい」

と手を振るのもここからきていると言われています。

 

振り袖の恋愛事情と袖にまつわる言葉&慣用句

振り袖のルーツは魂振りでしたね。

この振り袖の袂が長くなった理由はこんなふうに考えられています。

「平安の昔、人々は愛する人との良縁を願い袖を振るようになり、その効果を高めるためにどんどん袖が長くなった」

恋心を抱く人の魂を招き寄せるため長くなっていったなんてロマンテックですよね。

恋愛においては、相手に袖を振り、袖を振り返してもらえればOKのしるしだったとか。

私たちがフツーに使っている、

「振った」

「振られた」

の語源はここにあります。

他にもこの「袖」にまつわる言葉は身近に沢山残っています。

 

〈袖にまつわる言葉〉

辞典で「袖」を調べてみると、「袖」という字が入った慣用句が結構あります。
袖の下、袖にするなどはよく聞きますよね。

■袖の下

人目に付かないように袖の下から贈る物。内密に贈る物品や金銭。そでした・わいろ

■袖にする

親しくしていた人を、ないがしろにする。冷淡にあしらう。

■袖振る

別れを惜しんだりという意味と、好きな人に愛情を示したりするために袖を振るという意味。

■袖を引く

人を誘ったり、そっと注意したりすること。

■袖にすがる

あわれみを請うこと。

■袖振り合うも多生の縁

道で人と袖を触れあうようなちょっとしたことでも、前世からの因縁によって起こるもの。
多生とは、何度も生まれ変わってくることを意味します。

■ない袖は振れぬ

いい返事をしたくても、実際に無いものはどうしようもないということ。転じて、お金を貸したくても財力がなければ貸せないという意味となった。

■袖を通す

衣服を着るという意味や、特にはじめてその衣服を着ることを意味します。

 
「袖を通す」は普段でもよく使いますよね。

「袖を通してみたら思ったより短かった」

とか。

それにしても、「袖(を)振る」には愛情を示す・別れを惜しむという意味があるのに、「袖にする」というと親しくしていた人に冷たくすることになるのですから、同じ袖でも随分違った意味になるものです。

 

まとめ

振袖は未婚者であれば何歳まででも着られるものですが、お祝いの席での礼装ということを考えればマナーとしての年齢制限はあります。

「振袖を着られるのは20代まで」

とするのが無難です。
30代を過ぎて振袖を着るなら徹底的に上品にまとめましょう。

大切なお祝い、あなたの装いで華を添えられるようにできるといいですね。

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