神嘗祭と新嘗祭とはどんな祭り?
読み方は?
どこで何が行なわれるの?
似たような名前だけど違いは何?
その疑問、解消します!
神嘗祭と新嘗祭の明確な違い、
伊勢神宮と宮中祭祀のかかわり、
新嘗祭と勤労感謝の日の関係も含めて、わかりやすくお伝えします。
神嘗祭と新嘗祭はどんな祭り?
秋になると宮中では「神嘗祭」と「新嘗祭」が執り行われます。
神嘗祭は、「かんなめさい」と読みます。
「かんなめのまつり」「かんにえのまつり」「しんじょうさい」ともいいます。
新嘗祭は「にいなめさい」とよみます。
「しんじょうさい」「にいなめまつり」ともいいます。
神嘗祭と新嘗祭は名前がよく似ていますよね。
どちらも、
『その年に収穫した穀物に感謝する』
といった意味では共通するものですが、祭祀(祭りの儀式)の意味においては違いがあります。
神嘗祭と新嘗祭はいずれも、「宮中祭祀(きゅうちゅうさいし)」で、天皇によって執り行われます。
宮中祭祀とは?
宮中祭祀は、「きゅうちゅうさいし」と読みます。
宮中祭祀は、宮中三殿(きゅうちゅうさんでん)で、天皇陛下が国家と国民の安寧と繁栄を祈ることを目的に行う祭祀(儀式)です。
宮中三殿は皇居内の吹上御苑の東南にあります。
宮中三殿というのは、賢所(かしこどころ)・皇霊殿(こうれいでん)・神殿(しんでん)の総称で、賢所には、皇祖天照大御神がまつられています。
皇霊殿には歴代天皇・皇族の御霊がまつられており、神殿には国中の神々がまつられています。
宮中祭祀はわたしたちの目に触れるものではないので、知らない人も多いのですが、宮中での「祭祀」は、天皇家にとってはとても重要なものです。
ニュースなどで天皇陛下が国事行為のほか、海外の来賓おもてなしなどのご公務、被災地訪問などをされていらっしゃる様子に接しますが、天皇の本来のお仕事は祭祀にあるといわれています。
宮中では年間20件以上の祭儀が行われています。
【宮中でおこなわれる主要祭儀一覧】
- 1月1日 四方拝
- 1月1日 歳旦祭
- 1月3日 元始祭
- 1月4日 奏事始
- 1月7日 昭和天皇祭
- 1月30日 孝明天皇例祭
- 2月17日 祈年祭
- 春分の日 春季皇霊祭
- 春分の日 春季神殿祭
- 4月3日 神武天皇祭
- 4月3日 皇霊殿御神楽
- 6月16日 香淳皇后例祭
- 6月30日 節折(よおり)
- 6月30日 大祓
- 7月30日 明治天皇例祭
- 秋分の日 秋季皇霊祭
- 秋分の日 秋季神殿祭
- 10月17日 神嘗祭
- 11月23日 新嘗祭
- 12月中旬 賢所御神楽
- 12月23日 天長祭
- 12月25日 大正天皇例祭
- 12月31日 節折
- 12月31日 大祓
神嘗祭とは何をする祭り?
「神嘗祭(かんなめさい)」は、10月17日に宮中と伊勢神宮で行われる祭祀です。
宮内庁のHPの「主要祭儀一覧」では、神嘗祭は以下のように記載されています。
神嘗祭の「嘗」という字は、「神の饗(あえ)」が変化したものと言われています。
「饗」という字にはごちそうの意味があり、食べ物でもてなすという意味にもなります。
つまり、神嘗は、「神を食べ物でもてなす」という意味合いです。
神嘗祭の由来は、日本神話で天照大神(あまてらすおおみかみ)が高天原にて初穂を食されたことが始まりだとされています。
天照大御神は皇室の祖先神で、日本国民の総氏神ともされる女神です。
神嘗祭では、宮中と天照大御神を祀ってる伊勢神宮で、
『その年の初穂(初めて収穫された稲穂)を天照大御神に奉納する儀式』
が行われます。
神嘗祭で奉納される初穂は、宮中・伊勢神宮ともに、昭和天皇が始めた皇居の水田の稲で、毎年、天皇陛下が自らが植え、収穫しているものです。
天照大御神を祀る伊勢神宮では、神嘗祭は最も重要な祭りで、「神宮の正月」ともいわれており、この神嘗祭を機に御装束・祭器具が一新されます。
神嘗祭に合わせて、伊勢市内では神嘗奉祝祭が行われます。
10月17日は全国のお祭りや伝統芸能が奉納され、収穫の喜びと五穀豊穣の感謝を表すのです。
この日は全国の有名なお祭りを一度に見ることができるので、毎年、多くの観光客が訪れます。
新嘗祭とは何をする祭り?
「新嘗祭(にいなめさい)」は、11月23日に宮中で行われる祭祀です。
宮内庁のHPの「主要祭儀一覧」では、神嘗祭は以下のように記載されています。
新嘗祭の「新」は初穂を意味し、前述のように「嘗」はごちそうを意味しています。
新穀というのは五穀を指します。
五穀は通常、米、麦、粟などを指しますが、穀物全般という意味として使われています。
新嘗祭では、天照大神をはじめとするすべての神々にその年の五穀をお供えし、天皇陛下自身も食して収穫を祝うとともに五穀を得たことを神に感謝するのです。
日本神話では、天皇は天照大御神の子孫なので、天皇自らが召し上がることで、新たな力を得て、翌年の五穀豊穣を約束されるとされてきたといわれています。
新嘗祭の起源は古く、『古事記』にも天照大御神が新嘗祭を行ったことが記されています。
『日本書紀』では、新嘗祭は飛鳥時代の皇極天皇の時代(西暦642~645年)に始まったと伝えられており、『万葉集』には新嘗祭にまつわる和歌も読まれています。
新嘗祭は宮中の祭祀ですが、毎年11月23日に全国の神社でも行われるお祭りです。
新嘗祭と勤労感謝の日の関係
新嘗祭が行われる11月23日は「勤労感謝の日」でもあります。
勤労感謝の日とは、
「勤労を尊び、生産を祝い、国民が互いに感謝し合う日」
とされていますが、実は、11月23日は最初から勤労感謝の日だったわけではなく、そのルーツは新嘗祭にあります。
日本が戦争に負けた1945年(昭和20年)、日本国内ではGHQによる日本弱体化政策が始まりました。
GHQ(ジーエイチキュー)とは、General Headquartersの略で、連合国最高司令官総司令 ( れんごうこくさいこうしれいかんそうしれい)部のことで、第二次世界大戦後に連合国軍が日本を占領・管理するために設置した総司令部を指します。
GHQの占領下、国家神道の色が強い「新嘗祭」という名前の祭日を排除し、違う名前の祝日にするよう提案がありました。
そこで制定されたのが、現在の勤労感謝の日というわけです。
◇ 勤労感謝の日について詳しくはこちら。
・勤労感謝の日は何に感謝するの?由来と歴史で見る新嘗祭が関わる理由
神嘗祭と新嘗祭の違いは?
神嘗祭(かんなめさい)と新嘗祭(にいなめさい)はどちらも、基本、収穫を感謝するもの。
内容は同じように感じますが、違いもあります。
神嘗祭の場合は、伊勢神宮においてその年に収穫した新穀を奉納する儀式であり、収穫された初穂は天照大神にお供えします。
この時、天皇は初穂を召し上がりません。
一方の新嘗祭の場合、天皇陛下が五穀を日本の神話の様々な神々に捧げて豊作を感謝し、また天皇陛下自らもその五穀を食します。
10月17日の神嘗祭から新嘗祭まで1ヶ月以上の日があいているのは、11月23日は稲刈りが全国的に終わっている時期だからと考えられています。
神嘗祭で収穫をお祝いして、日本の国民全員にめでたくその年の新米が行き渡ったと思われる約1ヶ月後、11月23日の新嘗祭で、天皇陛下がようやく新米を口になされるのです。
このことから、新嘗祭まで決して新米を口にしない人もいるようです。
整理すると、以下のような違いがあります。
■ 神嘗祭(10月17日)
- 天照大御神に初穂をささげる祭
- 収穫祭の意味合い
- 宮中および伊勢神宮で執り行われる
■ 新嘗祭(11月23日)
- 全国の神様に収穫を感謝する祭
- 五穀豊穣の感謝祭の意味合い
- 天皇陛下自らもその五穀を食す
- 宮中のみで執り行われる
神嘗祭と新嘗祭の違いは何?意味と由来でスッキリわかる宮中祭祀 まとめ
神嘗祭と新嘗祭に使われている「嘗」には、食べ物でもてなすという意味合いがあります。
神嘗祭と新嘗祭はどちらも、基本、収穫を感謝するもの。
その明確な違いは、
・行われる日付
・行われる場所
・供えるだけか天皇自らも食すか
というところにあります。
実りの秋、おいしい新米(初穂)や旬の食材の味が際立つ季節です。
はるか昔から続いている宮中の儀式、神嘗祭と新嘗祭にあやかって、収穫に感謝しながら天の恵みを味わいたいですね。
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