勤労感謝の日は何に感謝するの?
働く人に感謝?
ハッピーマンデーにならない理由は?
由来の新嘗祭って何?
その疑問、解消します!
勤労感謝の日が制定されたキッカケは第二次世界大戦の敗戦。
歴史からルーツを知ると、勤労感謝の日が違った趣の祝日になりますよ。
勤労感謝の日って何に感謝するの?
11月23日は「勤労感謝(きんろうかんしゃ)の日」。
国民の祝日です。
子供の頃は、11月って「文化の日」と「勤労感謝の日」と2日も祝日があって嬉しいなー、と思ってました。
大人になってからは、3連休を期待して
「勤労感謝の日はハッピーマンデーにならないのか?」
と考え調べてみたところ、勤労感謝の日はハッピーマンデー制度の適用外。
勤労感謝の日は11月23日と固定されているのです。
ちなみに、ハッピーマンデーの対象になっている国民の祝日は、16日ある祝日うちの4日しかありません。
- 成人式(1月第2月曜日)
- 海の日(7月第3月曜日)
- 敬老の日(9月第3月曜日)
- 体育の日(10月第2月曜日)
「働く労働者諸君に感謝するなら、勤労の日はハッピーマンデーにすべきですよね!」
後輩が私の顔に鼻息を吹きかけんばかりに訴えるんですが、いや、待って。
それ、勤労感謝の日の意味をちょっと誤解しているところが。
11月23日の勤労感謝の日って「働いている人に感謝する日」と思っている人が多いのですが、
実は勤労感謝の日の対象は「働いている人」限定のものではないのです。
勤労感謝の日とは?
勤労感謝の日は『国民の祝日に関する法律』、通称『祝日法』によって制定された国民の祝日の一つです。
祝日法で勤労感謝の日の主旨を見ると、
「勤労をたつとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」
法律の文章はちょっとわかりにくいですね。
“ たつとび ” には、「尊敬」や「尊重」、「重んじる」といった意味があることから、
といったニュアンスになるのでは。
つまり、
「働けることを喜び合い、物作りができることをみんなでお互い感謝しあおう」
的な、とても清々しい思想の祝日です。
これが、コンパクトに「働いている人に感謝する日」のように伝わっているんですね。
勤労感謝の日の由来
勤労感謝の日の11月23日を、忙しく働いているお父さんを労う日として、親孝行や夫孝行をしている人も多いと思います。
実際、自分も子供の頃は勤労感謝の日になると、母親から、
「パパに『ありがとう』を言おうね」
と促され、父親にプレゼントを渡していました。
ですが、本来の勤労感謝の日はその捉え方とは少し違っています。
今でこそ11月23日は「勤労感謝の日」となっていますが、元々は違う名前の日で、違う意味を持った日だったのです。
勤労感謝の日ルーツは収穫祭?
戦前までは、11月23日は「新嘗祭(にいなめさい)」という祭日でした。
祭日というのは、皇室に関わる儀式や祭典が行われる日のこと。
新嘗祭は天皇が国家と国民の安寧と繁栄を祈るために祭祀を行う日です。
新嘗祭は「しんじょうさい」ともいい、「新」は新穀(しんこく)を「嘗」はご馳走を意味します。
新穀というのは、その年にとれた穀物。
特にお米(新米)をいいます。
現在も皇居では11月23日に天皇が神さまに祈る新嘗祭の儀式が行われています。
宮内庁のHPによると新嘗祭は、
とされています。
11月23日の新嘗祭のこの日、宮中では天皇が感謝をこめて新穀を神々に奉るとともに、御自らもお召し上がりになるのです。
この時、天皇陛下自らご栽培になった新穀もお供えになります。
また、11月23日には、宮中だけでなく伊勢神宮など全国で収穫祭である新嘗祭が催されています。
勤労感謝の日のルーツは、天皇だけでなく、国民も共にその年の収穫を感謝し祈る、言わば収穫祭だったわけですね。
◇ 新嘗祭についてはこちらに詳しく
・神嘗祭と新嘗祭の違いは何?意味と由来でスッキリわかる宮中祭祀
新嘗祭が勤労感謝の日になった理由
11月23日は新嘗祭の祭祀を行う祭日ですが、1948年に祝日法が交付されるまでは祝日ではありませんでした。
新嘗祭が勤労感謝の日になったきっかけは日本の第二次世界大戦における敗戦です。
勤労感謝の日の歴史
第二次世界大戦で日本は敗戦。
第二次世界大戦は、1939年(昭和14年)9月1日から1945年(昭和20年)8月15日または9月2日まで約6年にわたって続いたドイツ・イタリア・日本などの日独伊三国同盟を中心とする枢軸国(すうじくこく)陣営と、イギリス・フランス・中華民国・アメリカ・ソビエト連邦などを中心とする連合国陣営との間で戦われた戦争です。
日本はGHQ(じーえいちきゅー)によって占領政策をとられることとなります。
GHQというのは、連合国軍最高司令官総司令部。
正式名称、
「General Headquarters/ Supreme Commander for the Allied Powers」(総司令部/連合国軍最高司令官)
の略です。
この時GHQが真っ先に行ったのが、国民と皇室の切り離しと言われています。
戦前の日本には、国の祝日と大祭日とからなる12の「祝祭日」がありました。
12の祝祭日のほとんどは、紀元節・天長節など、皇室の祭祀を国民が共に祝う性質のものでした。
昭和20年12月、GHQは「神道指令」で、そうした祭祀を皇室の「私的な行事」として祝日から排除したのです。
GHQは天皇にいわゆる人間宣言をさせました。
このなかで昭和天皇は、天皇を現御神(アキツミカミ)とするのは架空の観念であると述べ、自らの神性を否定したのです。
天皇が現御神(現人神)であることを否定させたのに、天皇が祭祀を司る新嘗祭を日本の祝日にしては都合が悪かったのだと言われています。
GHQは神道と国家を分離、天皇と国民の行事の切り離しを行いました。
敗戦後はGHQによって、新嘗祭のほかの「祭日」もすべてなくなり、それらは「祝日」になりました。
こうして11月23日は、それまでの収穫祭としての要素が強い儀式(祭祀)を行う日から、
「働けることを喜び合い、物作りができることをみんなでお互い感謝しあおう」
という日になったわけです。
勤労感謝の日の意味は英語から?
アメリカには労働者のための祝日「Labor Day」
収穫を感謝する日「Thanksgiving Day」
というものがあります。
第二次世界大戦後、GHQが「Labor Thanksgiving Day」というものを定め、これを日本語に訳したものが「勤労感謝の日」という呼び方になったようです。
というわけで、
勤労感謝の日は、英語では「Labor Thanksgiving Day」ということになります。
◇ 「Thanksgiving Day」について詳しくはこちら。
・アメリカのサンクスギビングデー感謝祭とは何する日?起源と過ごし方
勤労感謝の日は何に感謝するの?由来と歴史で見る新嘗祭が関わる理由 まとめ
勤労感謝の日がハッピーマンデーの対象になっていない理由は、11月23日が新嘗祭の日だからなんですね。
勤労感謝の日の主旨は、
「働けることを喜び合い、物作りができることをみんなでお互い感謝しあおう」
元々は収穫祭であった11月23日の新嘗祭の祭儀が、戦後に勤労感謝の日となりました。
新嘗祭は今も毎年行われ、非常に重要な儀式の一つ。
勤労感謝の日は、秋の収穫にも感謝して、おいしい新米を味わうのもいいですね。
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・神嘗祭と新嘗祭の違いは何?意味と由来でスッキリわかる宮中祭祀
・アメリカのサンクスギビングデー感謝祭とは何する日?起源と過ごし方