ちはやぶるとはどんな意味?ちはやふるとの違いと百人一首の歌の解説

ちはやぶるとはどんな意味?ちはやふるとの違いと百人一首の歌の解説

『ちはやぶる』とはどんな意味?

枕詞って何?

百人一首の歌を現代語に訳すと?

『ちはやふる』とは違うの?

その疑問、解消します!

在原業平の和歌にこめられた2つの意味、

訳さない枕詞が持つ役割、

和歌の現代語の解釈も含めて、

わかりやすくお伝えします。
  

ちはやぶるとは?

ずいぶん昔のことですが、

小学生の時にわたしが通っていた学校で、

百人一首の大ブームがありまして。

そのおかげで和歌には耳馴染みのあるものが多くあります。

百人一首は和歌を読み上げて、書かれた札を取るゲームです。

覚えた時は子どもだったので、和歌の意味はおかまいなし。

ひたすら反射神経を競うところが面白く、

クラスの中でも男子女子問わずで大盛りあがりでした。

ここ最近は競技かるたを扱った漫画やアニメ、映画がヒットして、

百人一首に注目が集まったりもしてましたね。

ちはやぶるとはどんな意味?ちはやふるとの違いと百人一首の歌の解説
『ちはやぶる』とは、

平安時代(794年~1185年頃)前期から中期の歌人、

在原業平(825~880)が詠んだ百人一首の句のひとつにある初めの5文字です。

「千早(ちはや)ぶる 神代(かみよ)もきかず 竜田川(たつたがわ) からくれなゐに 水くくるとは」

『ちはやぶる』は、次の「神」にかかる枕詞(まくらことば)です。

枕詞とは?

枕詞というのは、和歌などで、特定の語の前に置かれて語調を整える語句のこと。

枕詞を和歌の最初に用いることで、

聞き手(読者)にあらかじめどんなキーワードが来るのか連想させるものです。

枕詞を簡単に言うと、音楽のイントロみたいなものですね。

和歌が「ちはやぶる」と始まれば、聞き手は

「あ、『神』が来るんだな」

とわかるわけです。

枕詞には、2つの特徴があります。

■ 枕詞の特徴

1. 五音であること。

2. 次にくる言葉が決まっていること。

「ちはやぶる → 神」

の他にも、

百人一首には

  • あしひきの → 山
  • しろたへの → 衣、雪
  • ひさかたの → 光、雲居

などがあります。

枕詞の使い方としては、

たとえば、

『山』という言葉を和歌で使いたい、

として。

「でも、そのまま言ってもつまらない」

と、作者は思うわけです。

それで、

「あしひきの(のぼるのに疲れて足を引きずってしまう)」

という言葉をイントロとして用いて、

歌を「あしひきの」と始めると、

次には『山』という言葉が来る、

と決まっているわけです。

和歌のルールでは枕詞は訳しません。

枕詞は楽曲のイントロ、

料理でいえば前菜のようなもので、

枕詞の後にメインディッシュが来るといった感じです。

ちはやぶるとはどんな意味?

『ちはやぶる』を一言で言うと、

『勢いの強いさま』

枕詞の『ちはやぶる』は、

「ち=激しい勢いで」

「はや=敏捷(びんしょう)、俊敏、すばしっこい」

「ぶる=ふるまう」

という言葉を縮めたものです。

『ちはやぶる』は、

「激しい勢いで敏捷にふるまう」

という意味を持つ言葉で、

その様子から『神』を表す枕詞となりました。

『ちはやぶる』には、

「荒々しい」

とか、

「神通力のような」

といった意味もあります。

在原業平の和歌の意味は?

そもそも百人一首というのは、

平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活動した公家の藤原定家(ふじわら の ていか)が選んだ和歌をまとめたものです。

百人一首に収録されている、

「千早(ちはや)ぶる 神代(かみよ)もきかず 竜田川(たつたがわ) からくれなゐに 水くくるとは」

は、古今和歌集、伊勢物語にも収録されています。

この和歌を詠んだ歌人の在原業平(ありわら の なりひら)は、

相当なイケメン&プレイボーイとしても名を馳せています。

ちはやぶるとはどんな意味?ちはやふるとの違いと百人一首の歌の解説そのことをちょっと念頭に入れておくと、

この和歌の解釈も面白くなります。

まずは、少しずつ分解してご説明しますね。

『ちはやぶる』は「神代」にかかる枕詞。

『神代も聞かず』の「神代」とは、太古の神々の時代のこと。

神々が国を治めた時代ですね。

「聞かず」は、聞いたことがない。

『神代も聞かず』で、

摩訶不思議なことが当たり前に起こった神々の時代でさえ聞いたことがないほど不思議な現象、

となります。


 
『竜田川』は、奈良県の竜田山のほとりを流れる川です。

現在も奈良県生駒郡斑鳩(いかるが)町にあり、

紅葉の名所としても知られています。

『からくれなゐ』の「から」は、唐や韓国を意味する言葉。

から=唐土(中国)や韓の国(韓国)からやってきた印象深いものを強調するときにつける言葉です。

「くれなゐ」は「紅」のことなので、

『からくれなゐ』とは、鮮やかな紅色という意味です。

『水くくる』の「くくる」は染め物の「括り染め(くくりぞめ)を指しています。

括り染めは「絞り染め」ともいい、

布を糸でくくって白い部分を残す染め方です。

紅葉が川一面を真っ赤にして流れている風景を、

竜田川が川の水を絞り染めにしてしまった、

と見立てています。

この分解したものを合わせた在原業平の和歌の歌意は、

「摩訶不思議なことが当たり前に起こった神々の時代でさえ、こんなことは聞いたことがない。
竜田川が川の水を(一面に浮かぶ紅葉によって)鮮やかな紅色に絞り染めしているなんて」

となります。

この和歌について、

古今和歌集では、

「屏風に描かれた、竜田川に紅葉が流れている様子を題材に詠んだ歌」

と但し書きがあります。

一方で伊勢物語には、

「竜田川に出かけていって実際に景色を見て詠んだ歌」

と書かれています。

ちはやぶるは在原業平の恋心?

「千早(ちはや)ぶる 神代(かみよ)もきかず 龍田川(たつたがわ) からくれなゐに 水くくるとは」

前述の意味をもっと簡単に口語訳すると、

「神代の昔にも聞いたことがない。紅葉の葉が竜田川に散って、水を鮮やかな紅色に絞り染めにするとは」

一見、美しい自然の風景を描写しているように見えますが、

実はこれ、在原業平が熱烈な恋愛関係にあった女性に対して贈った歌だとも言われています。

少し触れましたが、在原業平はイケメン&プレイボーイ、

恋多き男としても有名で、

平安時代前期の第56代天皇である清和天皇に嫁いだ二条后(にじょうのきさき)とも、

彼女が入内する(嫁ぐ)前には恋仲であったと言われています。

この和歌は古今和歌集では、『屏風に描かれたものを詠んだ』とされていますが、

在原業平がこの歌を詠んだのは、

清和天皇の皇后である二条后の邸宅だったといいます。

偶然招かれたのか、

二条后が故意に招いたのかは不明ですが、

元カノの前で詠んだ歌が、『ちはやぶる』です。

『神代も聞かず』の「神代」は「昔のこと」という意味もあることから、

暗に

「二条后との複雑な想いも歌にこめられている」

といった見方もできるのです。

個人的には、元カノ絡みの解釈の方が興味深いところです^^

ちはやぶるとちはやふるの違いは?

漫画や映画で競技かるたを扱ったタイトルは『ちはやふる』。

これまでご紹介した和歌の枕詞は『ちはやぶる』。

「ふる」に濁点がつくかどうかの違いですが、

『ちはやふる』と『ちはやぶる』は同じ言葉で、

意味に違いはありません。

在原業平が和歌で用いているのは『ちはやぶる』なので、

和歌を示す場合は、『ちはやぶる』と濁点をつけて使います。

ちなみに、古典落語の演目のひとつに『千早振る』というのがあります。

竜田川という力士が千早という花魁に振られる話の顛末ですが、

こちらは濁らずに、「ちはやふる」と読みます。

ちはやぶるとはどんな意味?ちはやふるとの違いと百人一首の歌の解説 まとめ

『ちはやぶる』は、「神」にかかる枕詞です。

枕詞というのは、和歌などで、特定の語の前に置かれて語調を整える語句のこと。

『ちはやぶる』は、

「激しい勢いで敏捷にふるまう」

という意味を持つ言葉で、

その様子から『神』を表す枕詞となりました。

「千早(ちはや)ぶる 神代(かみよ)もきかず 竜田川(たつたがわ) からくれなゐに 水くくるとは」

は、

「神代の昔にも聞いたことがない。紅葉の葉が竜田川に散って、水を鮮やかな紅色に絞り染めにするとは」

といった意味になります。

『ちはやふる』と『ちはやぶる』は同じ言葉で、

意味に違いはありません。

この歌の舞台になった竜田川は、

JR西日本の王寺(おうじ)駅から、

奈良交通バスに乗り、

「竜田大橋」で下車すると到着します。

付近は紅葉の名所、

紅葉狩りの季節には遥か平安の時代に想いを馳せて、

斑鳩の里を散策するのもいいですね。