ピクトグラムとはどんな意味?
どのような目的で使われるの?
表示することのメリットは?
歴史や由来は?
その疑問、解消します!
ピクトグラムと1964年の東京オリンピックとの関係、
世界に広まった理由、
アイコンとの違いも含めて、
わかりやすくお伝えします。
ピクトグラムとはどんな意味?
2020年東京オリンピック・パラリンピックのピクトグラムが発表されましたね。
ピクトグラムは、一般に「絵文字」や「絵単語」と呼ばれるもので、
何かの『情報』や『注意』を示すために表示される視覚記号(サイン)の一つです。
簡単に言えば、案内標識をイラストで表したものです。
ピクトグラムは英語で「pictogram」と書きます。
ラテン語の 「pictus (絵)」に、
接尾辞の「 -gram (書いたもの)」が接続したものです。
ピクトグラムは身近なところにたくさんあります。
たとえばトイレ。
男子トイレには男の人のシルエットをした「男マーク」、
女子トイレにはスカートをはいた女の人のシルエットをした「女マーク」が使われています。
駅や空港で使われている車椅子マークや、
建物の中でにある非常口マークもよく見かけるのではないでしょうか。
このようにピクトグラムは言葉に近い存在で、
物事を簡単な絵柄で記号化して表現するものです。
ピクトグラムを表示する意味は?
外国に行った時など、
その国の言語を学習していなくても、
ピクトグラムがあれば何を指し示しているのかがわかります。
視覚的な図柄で表現されているピクトグラムは、
言語にとらわれることなく、
直感的に内容が伝わってきます。
子どもや大人といった年齢にも関係なく伝わりやすいのも特徴です。
ピクトグラムは主に鉄道駅や空港などの公共空間で使用されてきましたが、
最近では一般の建物のみならず、
街のインフォメーション用サインとして、
屋外でも広く使われています。
ピクトグラムのメリットは?
言葉に頼らないピクトグラムには以下のようなメリットがあります。
- 文字が読めなくても理解しやすい
- 単純化された絵柄なので遠くからでも認識しやすい
- 「赤=危険」など、色によって感覚的に認識できる
ピクトグラムの歴史と由来は?
古代からわたしたちの祖先は、
壁画や象形文字などの視覚的な図を用いて記録を残したり、
コミュニケーションを取ってきました。
現在使われているようなピクトグラムの形は、
1920年に統計学で使用するために作られたのがきっかけと言われています。
当時の名称はピクトグラムではなく、
「アイソタイプ」
と呼ばれるものでした。
経済の動きをひと目で誰にでもわかりやすくするため、
統計学とグラフィックデザインを組み合わせて絵柄を作ったといいます。
ピクトグラムと東京オリンピック
今、わたしたちが目にするピクトグラムを世界に広めた国が、
実は日本だということはあまり知られていないところです。
1959(昭和34)年5月26日、
西ドイツ(当時)のミュンヘンで行なわれたIOC(国際オリンピック委員会)総会での投票により、
5年後の1964年の第18回オリンピック開催地に東京が決定します。
1964年の東京オリンピックの開催にあたって、
世界中から多くの外国人が日本に集まることになったわけですが、
当時の日本では公共の施設に対して、
『食堂』とか『お手洗い』といったように、
日本語の表示しかしていませんでした。
世界各国から訪日する人々に対して、
「どのようにナビゲートしていけばよいのか?」
が問題になったのです。
外国語(特に英語)によるコミュニケーションを取ることも、
当時の日本人にとっては今よりはるかに難しい問題でした。
そこで取り入れたのがピクトグラムです。
「各国の文字をすべて案内に表示することは不可能、
ならば『絵』で表現すれば良いのではないか」
ということで、
「誰が見てもわかるマークを作ろう!」
と提案したのが、
東京オリンピックのデザイン専門委員会委員長を務めた勝見勝氏です。
制作には勝見勝氏を中心として12名ほどのデザイナー(田中一光氏や粟津潔氏、山下芳郎氏など)が携わりました。
こうして、いくつものピクトグラムが考案され
今まで英字のみだった案内を
『国境や年代を超えて誰が見てもわかる図(=ピクトグラム)』
に変えたことで世界の注目を集め、
ピクトグラムが広がるきっかけとなりました。
東京オリンピックで話題となったピクトグラムは、
革新的発明としてその後のオリンピックに引き継がれ、
各国が競技種目のピクトグラムをデザインしていくことが慣例となったと言います。
デザイン専門委員会委員長を務めた勝見勝氏は、
東京オリンピックのピクトグラムが完成したときに
デザイナーたちに呼びかけて著作権を放棄させました。
オリンピック競技なども含めて約39種類作成したピクトグラムを、
「社会に還元すべき」
として著作権を持たなかったのです。
こういった英断もピクトグラムが世界に広がった大きな要因のひとつです。
わたしたちがふだん目にするトイレなどのインフォメーション用のピクトグラムも、
もともとは東京オリンピックで取り入れたピクトグラムにあるのです。
海外に出かけても迷わずトイレに行けるのも先人のおかげなんですね。
ちなみに、
東京オリンピックのピクトグラムの考案作業で、
最も難しかったのは「トイレ」だったそうです。
今では世界中のどこでも見かけるトイレのピクトグラムが、
日本発信のものだとはちょっと誇らしい気がします。
ピクトグラムとアイコンの違いは?
ピクトグラムによく似たものにアイコンがあります。
パソコンのデスクトップにあるのはアイコン、
Windows や Mac のデスクトップにもいくつか小さな絵が並んでると思いますが、
スマホやタブレットの画面にもアプリのアイコンがありますよね。
アイコンは、ユーザーが直感的に分かりやすく操作できるようにしているものです。
視覚的に伝えるという点ではピクトグラムとアイコンは同じですが、
アイコンの場合はピクトグラムと比べると、
装飾やカラフルなものも含まれます。
対してピクトグラムは、
言葉で説明をしなくても情報が伝わることを目的として単純化された視覚記号。
アイコンは言葉の補足や事前知識が必要なものもありますよね。
たとえば、ChromeやSafariのアイコンは、
それがブラウザだと知っていなければわからないものです。
アイコンは事柄を簡単な絵柄で表現していますが、
形を真似ていても情報を伝えるという点では事足りない場合があります。
最近はアイコンも端末が小さくなっても見やすいよう簡略化されて、
ピクトグラムのように単純な絵柄も使われるようになり、
ピクトグラムとアイコンの線引きがよくわからないものもあります。
おおまかな意味でいえば、
アイコンもピクトグラムの一つです。
ピクトグラムとはどんな意味?由来と歴史でわかるアイコンとの違い まとめ
ピクトグラムは案内標識をイラストで表したもの。
一般に「絵文字」や「絵単語」と呼ばれるもので、
何かの『情報』や『注意』を示すために表示される視覚記号(サイン)の一つです。
ピクトグラムは視覚的な図柄で表現されているので、
文字が読めなくても理解しやすく、
言語にとらわれることなく、
直感的に内容が伝わってきます。
もともとピクトグラムは、
統計学で使用するために作られたと言われていますが、
1964年の東京オリンピックの開催にあたって、
日本人が考案したピクトグラムがきっかけとなって、
現在のように世界に広まっています。
大まかに言えば、アイコンもピクトグラムのひとつですが、
アイコンは言葉の補足や事前知識が必要なものもあり、
情報を伝えるという点では事足りない場合があります。
ふだん何気なく見かけたり使ったりしているピクトグラムですが、
歴史や由来を知ると先人の知恵が伺えます。
日本が生んだ世界のデザイン、
多様性を迎えた今、
まだまだ進化していきそうですね。