「ずつ」それとも「づつ」?
「少しずつ」と「少しづつ」
「何個ずつ」と「何個づつ」
どっちが正しいの?
その疑問、解消します!
なぜ「ずつ」と「づつ」の2通りの書き方があるのか、
歴史的な背景、
文化庁の「現代仮名遣い」も含めて、
わかりやすくお伝えします。
「ずつ」と「づつ」正しいのはどっち?
「ずつ」と「づつ」。
こうして文字にすると書き方が違いますが、話し言葉で口にすると同じ音ですよね。
たとえば
「一人ずつ」「一人づつ」
「1個ずつ」「1個づつ」
「少しずつ」「少しづつ」
などなど、
「ずつ」と「づつ」についてはどちらの書き方も見かけます。
で、この「ずつ」と「づつ」の表記についてどちらが正しいのかというと、
一般的には「ずつ」を使うのが基本の仮名遣い(かなづかい)とされています。
「体調が少しずつ回復してきた」
「マスクはひとり2個ずつ配ります」
このように「ずつ」とは同じことを繰り返したり、
同じ量を割り当てたりする時に使われる副助詞です。
ただ、これを
「体調が少しづつ回復してきた」
「マスクはひとり2個づつ配ります」
と表記しても間違いではないのです。
「ずつ」と「づつ」はどちらを使っても誤りではありません。
ちょっと、ややこしくなりましたかね(笑)
つまり
『基本は「ずつ」だけど、「づつ」も間違いじゃない』
ということです。
どういうことかというと、
「づつ」は、「歴史的仮名遣い」で
「ずつ」は、「現代仮名遣い」だからです。
なので、今(現代)は「ずつ」を使うほうが “一般的” なのです。
なぜ一般的なのか、もう少し詳しくご説明しますね。
「歴史的仮名遣い」と「現代仮名遣い」とは?
『基本は「ずつ」だけど、「づつ」も間違いじゃない』
これってどういうことなんでしょうか。
それには国の行政機関である文化庁が指針を出しています。
日本では文化庁が、現代の国語を書き表すための仮名遣いの土台として、「現代仮名遣い」を定めています。
昔の言葉は「歴史的仮名遣い」
現代の言葉を「現代仮名遣い」
と区別しています。
そこで、前述のように
「づつ」→「歴史的仮名遣い」
「ずつ」→「現代仮名遣い」
とされているのです。
文化庁が定めた現代仮名遣い
文化庁が定めた「現代仮名遣い」とは、現在、一般に用いられている仮名遣いのことです。
「現代仮名遣い」は、1946年(昭和21年)11月16日の内閣告示によって公布されました。
「歴史的仮名遣い」も「現代仮名遣い」も、普段の会話では耳慣れない言葉ですよね。
たとえば、昔は「ちょうちょ(蝶々)」のことを「てふてふ」と表記しました。
「てふてふ」は「歴史的仮名遣い」で
「ちょうちょ」は「現代仮名遣い」です。
「けふ(今日)」は学校でも習った覚えがあるのではないでしょうか。
「けふ」は「歴史的仮名遣い」で
「きょう」が「現代仮名遣い」です。
人格者ほど謙虚であるというたとえで有名なことわざに
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」
というものがあります。
「みのるほどこうべをたれるいなほかな」
と読みますが、
この「頭(こうべ)」は「現代仮名遣い」で、
「歴史的仮名遣い」では「かうべ」と表記します。
他にも身近なところでいうと、昔は、おじいさんは「おぢいさん」と表記していました。
「おぢいさん」は「歴史的仮名遣い」で、
「おじいさん」は「現代仮名遣い」です。
このように歴史的仮名遣いを、現代語の発音に基づいて書き方を定めたものが現代仮名遣いです。
「ずつ」と「 づつ」文化庁によると?
「ずつ」と「 づつ」については文化庁のウェブサイトで確認できます。
以下は一部を抜粋して引用したものです。
「ずつ」と「づつ」の例として
「一つづつ」は「歴史的仮名遣い」で
「ず」が、「この仮名遣いで用いる仮名(現代仮名遣い)」となっていますね。
でずが、「現代仮名遣い」には特例があります。
文化庁のウエブサイトから文章の一部を引用しますね。
現代仮名遣い 本文 第2(表記の慣習による特例)
なお,次のような語については,現代語の意識では一般に二語に分解しにくいもの等として,それぞれ「じ」「ず」を用いて書くことを本則とし,「せかいぢゅう」「いなづま」のように「ぢ」「づ」を用いて書くこともできるものとする。
例 せかいじゅう(世界中)
いなずま(稲妻) かたず(固唾) きずな(絆*) さかずき(杯) ときわず ほおずき みみずく
うなずく おとずれる(訪) かしずく つまずく ぬかずく ひざまずく
あせみずく くんずほぐれつ さしずめ でずっぱり なかんずく
うでずく くろずくめ ひとりずつ
ゆうずう(融通)
(※赤線は管理人によるものです)
つまり
『国として本則としてるのは「ずつ」ですよ、でも「づつ」も使ってもいいですよ(許容しますよ)』
ということです。
「本則」というのは「正しい使い方」を意味します。
教科書や法令、公用文書、新聞・雑誌・放送などのメディアは「現代仮名遣い」の本則を基準としています。
なので、学校のテストでは「づつ」と書いてしまうと×、不正解となります。
ですが、手紙や文章などで「づつ」と書くのは “許容” されています。
このように「づつ」が許容になっているのには、「現代仮名遣い」の歴史的経緯があります。
「ずつ」と「づつ」二通りの表記がある歴史的背景
1946年(昭和21年)、
政府は文字と読んだ音が一致するように仮名遣いを交付しました。
その時の仮名遣いを「現代かなづかい」といいます。
この「現代かなづかい」では、「づつ」は間違いで「ずつ」が正しい仮名遣いとされました。
○ 「少しずつ」
× 「少しづつ」
先述のように「ちょうちょ」を「てふてふ」、「きょう」を「けふ」と書いたのと同様、もともとは「少しづつ」と書いていたものが、
1946年(昭和21年)の「現代かなづかい」の交付を境に
『「少しづつ」は誤った用法』
となったんですね。
終戦直後までは「づつ」と使っていたものを、一気に「ずつ」にしたわけです。
ですが、「ずつ」のみならず、旧仮名遣い(歴史的仮名遣い)を誤った使い方としてしまうといろいろ問題も生じます。
たとえば、我が国の文化的価値の高い文書や、ご高齢の方が使う表現などに「づつ」が入っていた場合、読み手側が
「あ、間違っている」
といったような誤った認識を持ちかねないことになります。
そこで、「現代かなづかい」の交付から40年後の1986年(昭和61年)、歴史的な背景も考慮して改訂された「現代仮名遣い」が交付されました。
前述のように「現代仮名遣い」では、「ずつ」が本則(正しい使い方)であるが、「づつ」も許容すると改められたのです。
- 1946年(昭和21年)以前:「づつ」
- 1946-86年(昭和21-61年):「ずつ」
- 1986年(昭和61年)以降:「ずつ」「づつ」
「ずつ(づつ)」の意味とは?
1986年の改訂では、
「ずつ」を本則としつつ、「づつ」も許容する表記となりました。
広辞苑で「ずつ」を引くと以下のようになっています。
《助詞》(副助詞)
①分量を表す語に付いて、一定量の事物を均等に割り当てる意を表す。あて。源氏物語(橋姫)「けさ、ころもなどすべてーくだりのほどーある限りの大徳達に賜ふ」。大鏡(道長)「行事二人に五十人ーわかたせ給ひて」。「全員千円ー払う」
②一定量の事物に付いて、その分量だけを繰り返し行う意を表す。源氏物語(帚木 )「二の町の心やすきなるべし、片端ー見るに」「少しー読む」「一人ー乗る」
広辞苑には「づつ」は載っていません。
ネットで検索できるgoo国語辞書では以下のようになっています。
[副助]数量・割合を表す名詞・副詞、および一部の助詞に付く。
1 ある数量を等分に割り当てる意を表す。「一人に二本ずつ与える」「五〇人ずつのクラス編成」
2 一定量に限って繰り返す意を表す。「一ページずつめくる」「少しずつ進む」
[補説]「一つ」「二つ」の「つ」を重ねたものか。中古から用いられる。goo国語辞書でも「づつ」は検索できませんでした。
ちなみに、上記の意味を持つ「ずつ」と「づつ」は、漢字では「宛」と表記します。
漢字表記されているものはほとんど見かけませんが、
「少しずつ」「少しづつ」→「少し宛」
「一個ずつ」「一個づつ」→「一個宛」
となります。
「ずつ」と「づつ」正しいのはどっち?違いと使い分けのポイントもご紹介まとめ
「ずつ」と「づつ」。
どちらも正しい表記ですが、
一般的には「ずつ」を使うのが基本の仮名遣い(かなづかい)とされています。
文化庁が定めた「現代仮名遣い」では「ずつ」が本則で、「づつ」は許容とされています。
教科書や法令、公用文書、新聞・雑誌・放送などのメディアは「現代仮名遣い」の本則を基準としているので、「ずつ」を使っています。
ですが、「づつ」は元々存在したものなので手紙や私的な文書では今も使われています。
現代の文学でも歴史的仮名遣いを使っている作者や作品があります。
普段の生活の中で「ずつ」と「づつ」、どちらを使うのか迷ったときは「ずつ」を使えば間違いありません。
「ずつ」の覚え方としてはわたしが子どもの頃は
『字画の多い方(「ず」は4画、「づ」は3画)』とか
『五十音順で先に来る方』といった覚え方をしていましたよ。