三途の川とはどんな意味?
三途って何のこと?
由来はどこから?
いつ渡るの?
渡り方はどうする?
その疑問、解消します!
三途の川の流れの速さが違う3つの瀬、
生前の業の如何は誰が決めるのか、
六文銭を用いるようになった歴史も含めて、
わかりやすくお伝えします。
途の川とはどんな意味?
以前、友人が札幌雪祭りに出かけて慣れない雪道で転んでしまい、
頭を強く打って、そのまま現地で入院したことがありました。
無事に回復し、
「三途(さんず)の川を渡りそこねたよ」
と笑っていましたが
この「三途の川」って実際どんな川なのか、
何を意味する川なのかは案外知らない人が多いんじゃないでしょうか。
よく、臨死体験をした人が
「三途の川を見た」
などと言ったりするので、この川が
『生死にかかわるもの』
だということはなんとなくわかりますよね。
この世とあの世の境界に存在するといわれているのが、この三途の川です。
わたしたちが生きている「この世(此岸)」と、死者がいる「あの世(彼岸)」の間には、亡くなった人が渡る川があるといわれているんですね。
その川が「三途の川」です。
人は亡くなると7日目にこの三途の川を渡ると言われています。
三途の川の三途とは?
三途の川の「三途」は仏教に由来するものです。
仏教には六道という六つの迷いの世界があると考えられています。
六道のなかでも畜生・餓鬼・地獄は三悪道(さんあくどう)とされる苦しみです。
この三悪道が三途と呼ばれるもののルーツです。
「餓鬼道(がきどう)」
「畜生道(ちくしょうどう)」
「地獄道(じごくどう)」
「餓鬼道」は、刀で虐げられる世界であるため、「刀途(とうず)」ともいわれます。
餓鬼道におちた者は、常に飢えと渇きに苦しみ、しきりに水や食物を欲しがるのですが
手にする食物は火に変わってしまうといいます。
「鬼畜道」は「傍生(ぼうしょう)」・「横生(おうしょう)ともいいます。
悪業の報いとして死後に生まれ変わる鳥・獣・虫・魚などの人間以外の動物の世界で、本能のままに生きる弱肉強食の世界です。
相互に食い合うことから「血道(ちみち)」とも呼ばれます。
「地獄道」は、まさに戦争に象徴されるような相手を傷つけ殺し合う世界です。
仏教における世界観では最下層に位置する世界になります。
火や炎に焼かれることから「火途(かと)」とも呼ばれています。
三途の川の由来は?
三途の川の名前の由来は諸説ありますが、大きく2説あります。
ひとつは、
この「餓鬼道」・「畜生道」・「地獄道」の三悪道が、仏教においてあの世の入り口が川であるという考え方が広がったため、「三途の川」と呼ばれるようになったと言われています。
もうひとつは、
『川の渡り方が三通りあることから「三途の川」と呼ばれている』
とする説です。
一般に、広く知られているのはこちらの方です。
三途の川の渡り方は?
「三途の川」は、あの世へ渡る川。
前述のように、この川を渡るのには、三つの途(みち)があるので「三途の川」とも言われており、
その人の生前の罪の重さによって渡る場所が決まると考えられています。
渡り方には3つのルートがあります。
- ルート1:善人は橋を渡る。
- ルート2:罪の軽い悪人は浅瀬を渡る。
- ルート3:罪の重い悪人は深瀬を渡る。
善人は金銀七宝で作られた橋を渡ると言われています。
犯した罪が軽い罪人は、「山水瀬(さんすいせ)」と言われる浅瀬を渡り、
罪が重い罪人は「強深瀬(ごうしんせ)」と言われる深瀬を渡ると言われています。
深瀬(強深瀬)はとても恐ろしい場所とされています。
川の流れはとても速く、波は山のように高く、川の上流からは岩石が流れてきて、罪人の身体を打ち砕いてしまいます。
ですが、罪人は既に亡くなっているので、その身体は修復され元に戻ってしまうという……
その上、川底には大蛇が潜んでおり、時にはその大蛇に食われることもあるという最悪の場所です。
善人と悪人では安全度が大違いです。
もし、川を渡りきれずに途中で流されてしまったら、そのまま地獄へ行くとも言われており
罪が重ければ重いほど、罪人は渡りきれずに地獄に行くと考えられています。
誰が三途の川のルートを決めるのか?
三途の川のほとりには、衣領樹(えりょうじゅ)と言う名の大樹があります。
そこには「奪衣婆(だつえば)」と「懸衣翁(けんえおう)」と呼ばれる老夫婦の鬼が住んでいて
亡くなった人は、三途の川を渡る前に奪衣婆によって衣類を剥ぎ取られます。
懸衣翁がその衣服を衣領樹に掛けると、生前の罪の重さがわかると言われ、
その罪の重さによって三途の川のどこを渡るのかが決定されると言われています。
こちらは青森県むつ市にある霊場・恐山の奪衣婆と懸衣翁の像です。
三途の川は六文銭で安全に渡る
このように、平安時代の末期頃までは、身を呈して川を渡ってあの世に向かったのですが、
室町時代以降からは船になります。
ここで、川を舟で渡るときの渡し賃として必要なお金として、『六文銭』が登場します。
六文銭の「文」とは、お金の単位のことです。
そして江戸時代の頃には
「六文銭を持っていれば衣類を剥ぎ取られる事もなく、罪の重さで渡る川を決められる事もなく、善人が渡る橋を渡って行くことが出来る」
とも信じられるようになりました。
これは、
「お金があれば解決できる」
という考え方よりも、
六文銭は『お賽銭』の役割として使われていたようです。
「生前犯した罪を反省して、仏に帰依します」
という証に六文銭を納めることによって、
地獄に落ちることなく三途の川を渡れるという信心です。
現代でも六文銭は、
- 三途の川を渡る船賃
- あの世へ行くためのお賽銭
という2つの考え方があります。
どちらにしても、故人が三途の川を無事に渡って成仏できるようにという思いから、棺の中に六文銭を入れるのです。
今では六文銭は使われていないお金ですが、各地で六文銭の代用となる印刷した紙を棺に納める習慣が残っています。
三途の川の三途とはどんな意味?渡り方や六文銭が必要な理由もご紹介!まとめ
三途の川は、この世とあの世の境界に存在するといわれている川で、
人は亡くなると7日目にこの三途の川を渡ると言われています。
三途の川の三途には大きく2つの由来があります。
ひとつは、仏教においての「餓鬼道」・「畜生道」・「地獄道」の三悪道を指しているというもの。
もうひとつは、あの世へ渡る川のルートとして3つのルートがあるというものです。
- ルート1:善人は橋を渡る。
- ルート2:罪の軽い悪人は浅瀬を渡る。
- ルート3:罪の重い悪人は深瀬を渡る。
平安時代の末期頃までは、身を呈して川を渡るという考え方でしたが、
室町時代以降からは、六文銭があれば船を使い、
江戸時代には善人が渡るという橋を渡ることができるとも信じられるようになりました。
三途の川はインド仏教には存在しなかったのが、中国で経典に登場し、それが仏教とともに日本にもたらされたと言われています。
宗教や死生観は人それぞれですが、日本人の多くが三途の川という言葉を知っています。
古くから信じられてきた三途の川には
『死んだあと、三途の川を前にして「しまった!」と悔やまないように普段から善行を心がけなさい』
という教えの意味もあるのかもしれませんね。