カレーの常温保存は食中毒の原因?加熱で死なないウエルシュ菌とは?

カレーの常温保存は食中毒の原因?加熱で死なないウエルシュ菌とは?

カレーの常温保存は食中毒の原因になるの?

鍋で一晩寝かせた2日めのカレーは危険?

ウエルシュ菌って何?

その疑問、解消します!

ウエルシュ菌食中毒の特徴と症状、

原因になる食品、

家庭で煮込み料理を作る時の予防のポイントも含めて、

わかりやすくお伝えします。

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カレーの常温保存は食中毒の原因?

家庭料理の定番のひとつ、カレーライス

カレーは大きな鍋でたっぷり作って、何日かに分けて食べるおうちも多いですよね。

一晩寝かすと、さらに美味しくなる

なんて言われてるし、

あえて、カレーは食べる前日に作るというケースもよく聞きます。

ところが、この「2日めのカレー」が食中毒の原因となったという事例が、驚くほど多く報告されているのです。

食べる前に、火を入れているから大丈夫!

味も匂いも見た目も異常なし

粗熱が取れたら鍋ごと冷蔵庫に入れてるし

そんな常識が通用しない「2日めのカレー」に繁殖しやすい食中毒菌が存在します。

その名は「ウェルシュ菌」。

ウェルシュ菌は自然界にいる菌ですが、増殖して人間の体内に入ると食中毒を起こしてしまいます

食中毒というと、外食などの飲食店での食事が原因と思われがちですが、家庭の食事でも発生します。

家庭で食中毒が起きても、発症する人数が少なかったり、症状の程度が軽かったりすると、風邪や体調不良だと解釈して、食中毒だと気づかれないことがあるんですよね。

食中毒だと気づかないまま放置しておくと、重症化することもあるので、注意が必要です。

ウェルシュ菌はサルモネラ菌やO157と同じく、家庭でも発生しやすい食中毒菌です。

しかも、ウエルシュ菌は加熱しても安全じゃないという厄介な特徴があり、おまけにカレーやシチュー、豚汁などの大鍋で作る煮込み料理が大好きです。

そのため、イベント会場や施設で発生することも多くあります。

沢山の人にカレーなどの煮込み料理をふるまう時は、前日から仕込んだりなどで、常温で放置しておく時間が長くなりますよね。

そんな状態がウエルシュ菌にとって好環境なのです。

大量に調理するところで発生して、一度に多くの患者数が発症することから、ウエルシュ菌による食中毒は「給食病」という呼ばれ方もされるほどです。

ウェルシュ菌の食中毒の患者数は毎年2,500名以上と言われています。

ウエルシュ菌とは?

カレーの常温保存は食中毒の原因?加熱で死なないウエルシュ菌とは?

加熱しても安全じゃない菌が大鍋の煮込み料理が大好きだなんて、当のウエルシュ菌にとっては、一晩寝かせたカレーはまさに楽園となってしまいますよね。

高温にめげないウエルシュ菌、いったいどんな性質や特徴を持った菌なのでしょうか。

ウエルシュ菌はどこにいる?

ウェルシュ菌は、土や水の中、健康な人や動物の腸内など自然界に幅広く生息している細菌です。

人の場合、ウェルシュ菌の保菌率は食生活や生活環境によっても異なります。

また年齢によっても違いがあり、保菌率は高齢者のほうが高い傾向があります。

家畜や魚からもウエルシュ菌は検出され、食品では、特に食肉(牛、豚、鶏肉など)の汚染が高いようです。

ウエルシュ菌の特徴は?

ウエルシュ菌には大きく3つの特徴があります。
 

ウエルシュ菌の特徴

  • 100℃、6時間の加熱にも耐える「芽胞(がほう」を形成する
  • 酸素(空気)がないところでも増殖する
  • 見た目や匂いでわからない

 

「芽胞」とは、細菌の生育環境が悪化した際に形成される耐久細胞で、「胞子」や「スポア」とも呼ばれます。

芽胞は熱や薬剤に強く、数分間の煮沸やアルコール消毒程度では死滅しません。

「食中毒は加熱すると安全、安心」

と思っているかもですが、加熱はウエルシュ菌には通用しないのです。

確かにグツグツと加熱すれば、熱に弱いたいていの菌は死滅してしまいます。

ところが、ウエルシュ菌は熱に強い「芽胞(休眠状態)」で生き残り、温度が下がってくると、その芽胞から菌が発芽して復活し、急速に増殖するのです。

この芽胞を一度作ってしまうと、通常の加熱では菌は死滅しないんですね。

そして、ウエルシュ菌は、鍋底のような空気がないところでも自由自在に増殖することが出来るのです。

また、ウエルシュ菌が繁殖している食べ物は、見た目や匂いではわかりません

糸が引いているとか、変な匂いがするとか、何かしら変化があれば誰でも危険を察知しますが、ウエルシュ菌は見た目も匂いも変化させません

なので普通に食べてしまって、下痢や腹痛が起きてもすぐに原因に気づかないことが多いのです。

ウエルシュ菌の潜伏期間は?

ウエルシュ菌の食中毒は、6時間~18時間の潜伏期間(平均10時間)で発症します。

ウエルシュ菌の症状は?

ウエルシュ菌の食中毒による症状は、主に、水様性の下痢と腹痛です。

特に下腹部がはることが多く、食中毒の症状としては軽いほうです。

嘔吐や発熱はまれで、2日ほどで症状がおさまることが多いようです。

他の食中毒と比べると、症状が比較的軽めなことと、食品の見た目で気付けないことが多いため、前述のように風邪や体調不良だとやり過ごすケースが多いようです。

ですが、場合によっては重症化するケースもあるので注意が必要です。

特に小さな子どもや高齢者は体力がないので、何が原因なのか確信がなくても速やかに医師の診断を受けるようにしてくださいね。

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どんな食品が原因になるの?

ウエルシュ菌の食中毒の原因になるのは、肉類・魚介類・野菜を使った煮込み料理が多いです。

O157などの他の食中毒と同様に、飲食店、仕出し屋、旅館、学校などの集団給食施設による事例が多く報告されています。

ウエルシュ菌の食中毒は、カレー、シチュー、豚汁、スープ、麺つゆなどのように、食べる日の前日に大量に加熱調理され、鍋に入れたまま室温で放置して冷ましていたケースが多く見られます。

「加熱した食品は安全」

「煮込み料理は何時間も加熱しているから腐らない」

といった誤った考えや思い込みが、ウェルシュ菌による食中毒の発生原因となっているようです。

食中毒を起こすウエルシュ菌の予防対策は?

加熱しても死なないという特徴を持つウエルシュ菌ですが、もちろん、予防することはできます。

前述のように、ウェルシュ菌は土中や空気中などの自然界や生き物の体内に存在する常在菌です。

なので、まずは、野菜や食肉、魚介類などの全ての食材には、ウエルシュ菌が高い確率で含まれているという前提を押さえておきます。

その上で、しっかりと手洗いをして衛生管理を徹底することはもちろんのこと、ウエルシュ菌の特徴を把握して対処することが必要です。

食中毒予防の3原則は、

菌をつけない・増やさない・やっつける

です。

カレーの常温保存は食中毒の原因?加熱で死なないウエルシュ菌とは?

一般的には「菌をつけない」ことが最も重要です。

菌がゼロであれば増殖しないので、つけなければ食中毒は起きません。

ですが、ウエルシュ菌は自然界にもヒトにも常駐している菌です。

なので、ウエルシュ菌に関しては、「菌を増やさない」ことが最大の予防策といえます。

ウエルシュ菌を増やさない煮込み料理の作り方

煮込み料理は大量に作らないで、できるだけ少ない量にして食べきるのが効果的な予防になりますが、そうもいきませんよね。

わたしの経験上、料理って少なく作るよりたくさん作るほうが格段に美味しいと思います。

ウエルシュ菌を増やさないための料理の作り方は、以下の4つがポイントになります。

  • 調理前にしっかり手洗いをする
  • 野菜はよく水洗いをして「泥」を落とす
  • 味見は小皿でする
  • 料理を空気に触れさせる

■ 調理前にしっかり手洗いをする

ウエルシュ菌は私たちの手にも付着しています。

調理前は石鹸を使ってしっかりと手洗いをするのは食中毒予防の基本です。

■ 野菜はよく水洗いをして「泥」を落とす

土の中にもウエルシュ菌がいるので、野菜についたもしっかり洗い流しましょう。

■ 味見は小皿でする

ウエルシュ菌はヒトの体内にもいるので、直接お玉で味見をしたりすることで、料理にウエルシュ菌が入ってしまいます。

味見は必ず小皿にとってするようにしましょう。

■ 料理を空気に触れさせる

煮込み料理はどうしても中心部分の加熱が不十分になったり、酸素に触れていない部分ができてしまいます。

鍋底などの酸素濃度が低いところはウェルシュ菌が活動しやすい場所です。

煮込み料理を作るときは、よくかき混ぜながら、中心部まで空気が触れるようにして加熱します。

カレーの常温保存は食中毒の原因?加熱で死なないウエルシュ菌とは?まとめ

一晩寝かした2日めのカレーが大好きなウエルシュ菌は、増殖して人間の体内に入ると食中毒を起こしてしまいます。

ウェルシュ菌は、土や水の中、健康な人や動物の腸内など自然界に幅広く生息している細菌です。

ウエルシュ菌の特徴は、

  • 100℃、6時間の加熱にも耐える『芽胞』を形成する
  • 酸素(空気)がないところでも増殖する
  • 見た目や匂いでわからない

となります。

ウェルシュ菌の食中毒による症状は、主に、水様性の下痢と腹痛です。

加熱しても死なないという特徴を持つウエルシュ菌を増殖させないためには調理の際、以下の4つに気をつけましょう。

  • 調理前にしっかり手洗いをする
  • 野菜はよく水洗いをして「泥」を落とす
  • 味見は小皿でする
  • 料理を空気に触れさせる

細菌の多くは高温多湿な環境で増殖が活発になりますが、10℃以下では増殖がゆっくりとなり、マイナス15℃以下では増殖が停止します。

保存する時は、食べものについた菌を増やさないために低温保存が重要です。

食中毒を防ぐには、一気に10℃以下に冷却して、菌の増殖に適した温度帯の時間をできるだけ短くするのがコツです。

カレーやシチューのような、とろみがあって冷めにくい食品は、平たい容器に小分けして表面積を広げると早く冷めます。

食品を調理した鍋のままだと冷めるまでに時間がかかるので、その間にウェルシュ菌が増殖して食中毒が発生したケースもあります。

解凍する時は、解凍している間に菌が増殖しないよう、冷蔵庫で解凍するか電子レンジなどで一気に再加熱します。

煮込み料理は美味しいだけではなく、調理にかかる時間や光熱費を節約できるメリットもあるとても便利な料理です。

食中毒を避けるためのポイントをしっかり把握して、美味しい手料理を味わってくださいね。

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