旧暦8月1日の八朔とはどんな意味?
名前の由来は?
どういった行事があるの?
果物のはっさくとの関係は?
その疑問、解消します!
2021年の八朔はいつなのか、
旧暦と新暦がズレる理由、
各地で行われている代表的な行事も含めて、
わかりやすくお伝えします。
旧暦8月1日の八朔とはどんな意味?
8月1日は、「八月朔日(はちがつさくじつ)」を縮めて「八朔(はっさく)」とも呼ばれる日です。
「朔日」というのは、「一日(ついたち)」という意味。
朔日の「朔(さく)」とは、一般的に「新月」と呼ばれる現象を指します。
旧暦(陰暦)では、新月が現れる日を月初めとしていました。
そのため、一日を「月立ち(つきたち)」と呼び、後に「朔日(ついたち)」という字をあてるようになったといわれています。
「八月朔日」を略して「八朔」、旧暦8月1日のことを意味するというわけです。
旧暦の8月1日は毎年違う?
旧暦の8月1日の日付は、毎年違います。
月の満ち欠けをもとにした「旧暦」に対して、今、わたしたちが使っている「新暦」は地球が太陽の周りを回る周期を基準にしています。
地球が太陽の周りを一回りするのにかかる時間は365.24219日。
一年は365日ですが、新暦では4年に一度、一年を365日とする「閏年(うるうどし)」を設けて調整しています。
新月から新月は平均すると約29.5日なので、旧暦だと一年が354日になります。
旧暦では、約3年に一度、「閏月(うるうつき)」を設け、一年を13ヶ月にすることで調整していました。
なので、おおよそ旧暦と新暦では1ヶ月ほどのズレが生じます。
旧暦の8月1日を新暦にあてはめても、毎年同じ日にちになるわけではないんですね。
2022年の旧暦の8月1日はいつ?
2022年の旧暦の8月1日は8月27日(土)になります。
八朔ではどんな行事が行われるの?
旧暦の8月1日頃は、ちょうど稲穂が実り始める大切な時期。
古くから農家では、目前に控えた稲の収穫を願って、ふだんお世話になっている人に、その年の初穂を贈る慣わしがありました。
これが、鎌倉時代(1185年~1333年)になると武家や公家、商家にも広まります。
武家や公家、商家でも、お世話になっている人へ品物を贈り、祝賀の意を表すことが慣わしとなっていき、この慣習は「田の実の節句」と呼ばれるようになります。
『稲穂 → 田に実るもの → 田の実の節句』
田の実の節句は「田の実」が「頼み」とかけられて、武家や公家でも「頼みにしている人」に贈り物をする慣わしになったといわれています。
江戸時代(1603年~1868年)になると、1590年(天正18年)の8月1日、この八月朔日に、徳川家康が公式に江戸城入りをします。
こうして八朔は幕府や武家にとってきわめて重要な日となり、お正月の次に重要な日となります。
八朔には大名や旗本などが、白帷子(しろかたびら)を纏って登場し、将軍家に祝辞を述べる「八朔御祝儀」と呼ばれる行事が行われていました。
明治以降も八朔は祝われていたようですが、いつしか下火になり、消えていきました。
現在でも、一部の地域では八朔の行事が行われています。
京都の花街では、新暦の8月1日に、芸妓さんや舞妓さんが、師匠やお茶屋などへ挨拶に回ることが慣わしとなっています。
正装で挨拶回りをする芸妓さんや舞妓さんの様子、ニュースなどで見かけたこともあるのではないでしょうか。
もともとの旧暦に近い9月上旬に「八朔祭」をする地方も西日本を中心に多く残っています。
大規模なお祭りとしては、熊本県上益城郡山都(やまと)町で行われる「熊本の八朔祭」があります。
熊本の八朔祭は旧暦8月1日に近い新暦9月第一土曜・日曜の二日間にかけて行われます。
この日は、田の神に感謝し収穫の目安を立てる日とされていて、高さ3~4m、長さ7~8mの「大造り物(山車)」が数十基くりだし、多くの観光客や写真家が訪れることでも知られています。
福岡県芦屋町では、長男・長女の誕生を祝う行事が行われます。
男児には藁で編んだ「わら馬」、女児には米粉で作った「団子雛」を家に飾るというもので、300年以上続く伝統行事だとか。
香川県丸亀市では、丸亀藩出身の馬術の名人・曲垣(まがき)平九郎にちなんだ行事が行われています。
米の粉で作った「八朔だんご馬」で、男児の健やかな成長を祈る風習です。
八朔と果物のはっさくは関係ある?
果物の「はっさく」と「八朔」、呼び名が同じですね。
◇ はっさくの話題 こちらもどうぞ。
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はっさくは皮が厚めでむきにくいですが、あの独特のほろ苦さがなんともいえない味わいです。
はっさくはみかんの一種で、純日本産の晩柑類です。
ちなみに、はっさくは英語で「Hassaku Orange」。
純日本産だけあって、「はっさく」はそのままです。
実は、このはっさく、やはり八朔と関係があって、
「8月1日ごろには食べられる」
「8月1日ごろから食べられる」
ということから、1886年(明治19年)に名づけられました。
はっさくは瀬戸内海の因島(広島県)の田熊町にある惠日山浄土寺の境内に古くからあった木が原木です。
1860年、当時の住職だった惠徳上人が偶発に発見しました。
これをきっかけに、愛媛・徳島・高知・大分・熊本・和歌山へと広まります。
はじめのうちは、各地でいろいろな名前で呼ばれていましたが、「(旧暦の)8月1日ごろから(ごろには)食べられる」ということで『はっさく(八朔)』という名称がつきました。
惠徳上人は、毎年八朔の日に果実を檀家に配り、皆で味わったと伝えられています。
ですが、これはちょっと疑問、というか不思議なんですよね。
前述のように、旧暦の8月1日は現在の暦では9月の半ばから下旬。
はっさくは通常、早ければ12月に収穫しますが、9月のはっさくはまだまだ未熟で食用になるとは思えません。
実りの時期とは大きくずれているので、
「8月1日ごろには食べられる」
「8月1日ごろから食べられる」
といった名前の由来については、首をひねるところがあるのです。
現在は、12月に収穫して、貯蔵して熟成させ、1月~3月に出荷するパターンが一般的です。
一部では3月ごろまで木に成らせておき、「木成り八朔」「完熟八朔」としても出荷しています。
いずれにしても、はっさくは8月1日に食べられる果物ではないのです。
旧暦8月1日の八朔とはどんな意味?名前の由来でわかる伝統行事 まとめ
8月1日は、「八月朔日(はちがつさくじつ)」を縮めて「八朔(はっさく)」とも呼ばれる日です。
「朔日」というのは、「一日(ついたち)」という意味。
旧暦と新暦では1ヶ月ほどのズレが生じるため、旧暦の8月1日の日付は、毎年違います。
2022年の旧暦の8月1日は8月27日(土)になります。
古くから農家では、目前に控えた稲の収穫を願って、ふだんお世話になっている人に、その年の初穂を贈る慣わしがありました。
それが武家や公家、商家にも広まり、「田の実の節句」と呼ばれました。
もとは収穫の前祝いだったものが、広まるにつれ、贈り物をしあう習慣になったのです。
江戸時代になると、八月朔日に、徳川家康が公式に江戸城入りしたことから重要な日となりますが、いつしか下火になりました。
ですが、現在でも、一部の地域では八朔の伝統行事が行われています。
あたりまえですが、8月以外に、他の月でも「一日」はあります。
8月1日に「八朔」という特別な呼び名があり、今も残っているのは、古くからさまざまな行事が行われている日ということもあるのかもしれませんね。
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