ダムの取水制限とはどんな意味?
給水制限との違いは?
取水制限や給水制限が実施されるとどうなる?
その疑問、解消します!
取水制限がニュースになる理由と目的、
給水制限による具体的な影響、
東京オリンピック渇水の事例も含めて、
わかりやすくお伝えします。
取水制限と給水制限の違いとは?
これから本格的な夏を迎えようという頃、
『取水制限』や『給水制限』という言葉を
ニュース等でよく耳にすることがあります。
水が足りないということはわかりますが、
「制限」と聞くと、
何やら穏やかではない感じがして
「水が使えなくなるの?」
と心配する人も多いようです。
水不足になると、
飲み水はもちろんのこと、
家事や炊事などで使う水、
学校のプールや公園の噴水、
農作物の育成や工場製品などにも
多大な影響を及ぼしてしまいます。
『取水制限』の段階では、
まだ各家庭の水道への影響はありません。
ですが、
更に雨が降らず、
『取水制限』を行っても
水不足が解消されない場合には
『給水制限』が始まります。
この『給水制限』の段階になると、
一般の家庭への水道水の供給が制限されることになり、
わたしたちの暮らしにも影響が出ます。
わたしたちが生活するための水や、
田畑に供給するための水、
工場製品に使用される水、
河川に流れる水、
人間の暮らしに欠かせないこれらの水は
すべてダムから浄水場を通して
送られる仕組みになっています。
水道の蛇口から出る水は、
ダムから河川に放流され、
それを浄水場できれいにしてから
水道の蛇口を通ってやってきます。
ダムが渇水して水不足になっているときは
これまで通りの水量を使うわけにはいかなくなってくるので、
まずは取水量を減らす『取水制限』が行われます。
前述のように『取水制限』をしても足りず、
水不足が解消されないときに
『給水制限』が始まります。
『給水制限』が行われると、
蛇口から出てくる水の量は少なくなってしまいます。
取水制限とは?
『取水制限』とは、河川から取る水の量を制限することです。
実施する基準は、
各水系の水の需要などによって異なりますが、
国土交通省や地方整備局、
県などの自治体でつくる各水系の連絡協議会で決定します。
ダムの水は
- 家庭で使用する「水道用水」
- 農業のために使う「農業用水」
- 工場などで使う「工業用水」
に使用が分類されています。
『取水制限』は工業用水や農業用水から制限がかかります。
水不足が解消されるまで、
段階的に10%、20%と増えていきます。
たとえば、
1次取水制限は貯水率が60%の場合に
20%の取水制限、
取水制限が強化される「2次」では
貯水率45%で35%の取水制限、
「3次」は貯水率30%で50%の取水制限、
「4次」は15%の貯水率で60%の取水制限、
といったような目安があります
段階的に調整しているので、
水を使う側としては
「いつもよりちょっと水圧が低くなったな」
ぐらいにしか感じない程度です。
取水制限はなぜニュースで取り上げられるの?
『取水制限』は一般家庭への影響はありません。
ではなぜニュースなどで取り上げられるかというと、
各家庭への節水の呼びかけをするためです。
ダムの貯水率が平年より少ないと、
国土交通省は「渇水対策本部」を設置し、
節水を呼びかけます。
もしかするとすでにダムは
少ないところでは20%になっているかもしれません。
そこで少しでも意識を変えてもらおうと、
国や自治体が『取水制限』の情報を広報しているのです。
『取水制限』はただちに『給水制限』につながるものではありませんが、
次の段階の『給水制限』となると
その影響は大きく異なってきます。
給水制限とは?
水不足の渇水対策として
『取水制限』から『給水制限』となると状況は深刻です。
『給水制限』とは、家庭への水の供給を制限することです。
簡単に言うと、
各家庭の蛇口から水が出ないように制限するのです。
一番分かりやすい方法が「断水」です。
給水制限には2つの段階があります。
まず「減圧給水」が行われます。
「減圧給水」というのは、
給水の水圧を下げて
蛇口から出る水の量を少なくすることです。
「減圧給水」を行っても水不足が続く場合には
次の段階として、
「時間給水」が行われます。
これがいわゆる「断水」です。
普段は24時間供給されている水道水を
時間を制限して給水することで
水不足の解消を目指すわけです。
ですが、
『給水制限』が家庭への水の供給制限と言っても、
家庭への水には商用も含みます。
そのため飲食業などでは大きな影響が出てしまいます。
ダムの水が減り続けると、
真夏に断水という恐ろしい事態も起きかねないのです。
東京オリンピック渇水
実際に『給水制限』が行われた事例で有名なものに、
1964年(昭和39年) の「東京オリンピック渇水」があります。
この年の東京は記録的な水不足で、
10月10日から始まる東京オリンピックを前に
7月10日からオリンピックの開会式直前の、
10月1日まで給水制限を実施しました。
極限状態の水不足に昼間も断水する厳しさで、
給水制限率は最大50%まで強化されました。
自衛隊や警視庁などの応援給水のほか、
アメリカ軍による応援給水もあり、
バケツを持った人が列を作りました。
水が使えないので
家庭ではパン主体の食事となり、
入浴や洗濯も制限。
プールへの注水も禁止となり、
水を多く使う理髪店やクリーニング店、
製氷会社などにも影響が出ました。
消火栓からの水量が少なくなり、
消防活動にも影響が出ましたし、
病院では手術ができないなど、
医療活動にも影響を及ぼしました。
また、衛生状態の悪化から食中毒が続出しました。
東京オリンピック渇水の1964年当時は、
首都圏の水を支えるダムも
現在に比べて少なかったということですが、
真夏の節水や断水は命にかかわってくるので、
本当に恐怖ですね。
給水制限は誰が決める?
給水制限は主に自治体の水道事業者が実施を決定します。
ですが、地域によっては
地下水や井戸水などを使っている所もある上、
水の需要は場所によっても変わってくるので
どこが決めるという明確な基準があるわけではありません。
取水制限と給水制限の違いとは?渇水や水不足による影響はどこまで? まとめ
『取水制限』の段階では、
まだ各家庭の水道への影響はありませんが、
『給水制限』の段階になると、
わたしたちの暮らしにも影響が出ます。
『取水制限』… 河川から取る水の量を制限すること
『給水制限』… 家庭への水の供給を制限すること
家庭への水には商用も含みます。
水不足の問題はわたしたちにとって重要で
かつ広範な問題となります。
お天気はどうにもできないので、
最悪の断水を回避するために大事なのは節水です。
日頃から節水を心掛けて、
ひとりひとりが意識をもって
水不足に対応できるといいですね。
◇ 夏の話題 こちらの記事もご参考に。
・夏日と真夏日と猛暑日それぞれの違いは?気象庁の高温注意情報とは?
・うだるような暑さとはどんな意味?うだるとゆだるの違いは?使い方と文例
・室内の冷房が効いていてもなる熱中症の正体と死にいたる理由とは?