「瀬戸際」と「水際」の意味と違いは?
使い分け方は?
どんな場面で用いられるの?
使い方の例文は?
その疑問、解消します!
「瀬戸際」と「水際」が持つ意味合いと言葉の由来、
ニュースやビジネスシーンでの使い方の文例も含めて、
わかりやすくお伝えします。
瀬戸際と水際の違いは?
緊迫した状況を表すときに
「生きるか死ぬかの瀬戸際だった」
とか、プロ野球では
「マジック消滅の瀬戸際」などと言いますが
この『瀬戸際(せとぎわ)』という言葉、
最近は新型コロナウイルス関連のニュースでもよく見聞きしますよね。
同じように新型コロナウイルス関連の報道では『水際(みずぎわ)』という言葉もよく出てきます。
『瀬戸際』と『水際』。
どちらも何かしらの「ギリギリ感」をかもす言葉ということは感じると思います。
『瀬戸際』と『水際』の違いをカンタンに言うと
- 『瀬戸際』は「物事の分かれ目」
- 『水際』は「上陸する直前」
となります。
『瀬戸際』と『水際』にはどちらにも「際」という漢字が使われていますよね。
この「際」の由来がわかると一層、理解が深まります。
まずは『瀬戸際』から見ていきましょう。
瀬戸際の意味とは?
『瀬戸際』の意味は「物事の成功・失敗の分かれ目」のことです。
成功か失敗か、勝つか負けるか、生きるか死ぬかなど、運命の分かれ目を言います。
広辞苑には以下のように載っています。
① 瀬戸と海との境
② 安危・成敗・生死のわかれる、さしせまった場合。運命のわかれめ。浄瑠璃、大塔宮曦鎧「この―に思案どころか」。「命の―」
こうして見ていくと、『瀬戸際』という言葉には緊迫感がありますよね。
まさに自分の今後を左右するような、とても重要な場面に用いられることが多い言葉です。
瀬戸際の由来や語源は?
『瀬戸際』という漢字から
「瀬戸内海」や「瀬戸物」をイメージする方も多いかもですが、『瀬戸際』の由来は全くの別物です。
『瀬戸際』の「瀬戸」とは?
『瀬戸際』の「瀬戸」には「狭門(せと)」という意味があります。
狭門は「狭(せま-い)」という字のとおりで、双方で相対する両側の陸地が接近して海が狭くなっているところを表していました。
つまり、海峡(かいきょう)ですね。
陸地にはさまれた、海の狭い部分です。
「瀬戸」は古くは「せど」とも呼ばれ、
漢字で「瀬戸」と表記されるのになったのは近世以降のことです。
日本の中国地方と四国地方の間にある「瀬戸内海」も、海と陸地が狭い海峡となっているところですよね。
実は「瀬戸内海」の「瀬戸」も『瀬戸際』の「瀬戸」同様、「狭門(せと)」が語源となって「瀬戸内海」と呼ばれているのです。
『瀬戸際』の「瀬戸」も、「瀬戸内海」の「瀬戸」も同じルーツというわけです。
『瀬戸際』の「際」とは?
『瀬戸際』の「際」は境界となるところ、境目(さかいめ)の部分を意味する言葉です。
なので、本来の『瀬戸際』が意味するところは、
「海峡(陸地にはさまれた海の狭い部分)と陸地との境目」
です。
ここから、重要な分岐点や物事の分かれ目、運命の分かれ目になるようなポイントを『瀬戸際』というようになったのです。
瀬戸際の使い方と例文
『瀬戸際』は「物事の分かれ目」を指す言葉でしたね。
成功するか失敗するか、丁と出るか半と出るか。
『瀬戸際』はどちらに決まるかで運命が左右されるような、重要な場面で使われることが多い言葉です。
「戦闘地では市民が生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされている」
「瀬戸際になって作戦を変更したのは正解だった」
「撤退の瀬戸際を見誤ったのは司令部だ」
「我々は新型ウイルスの感染拡大の瀬戸際に立っている」
「それが本当ならこの場にいる全員が命の瀬戸際にいるということだ」」
「女王は国が滅びるか否かの瀬戸際に立たされた」
「我々は、その巧妙で卑劣な犯罪を瀬戸際で食い止める」
「人間として駄目になるかならないかの瀬戸際だ」
「本人も自分の外交は瀬戸際政策であることは自認していた」
※瀬戸際政策:緊張を高めることにより交渉相手に譲歩を迫る政治手法
水際の意味とは?
- 『瀬戸際』は「物事の分かれ目」
- 『水際』は「上陸する直前」
とお伝えしました。
もう少し、『水際』を詳しくご説明しますね。
『水際』は水面と陸地とが接するところを意味します。
「際」は境界となるところ、境目(さかいめ)の部分を意味する言葉でしたね。
「水」の「際」(きわ=他との境界になるところ)ですから、水に関係して何かが接する境目のところという意味です。
水際を広辞苑で調べると以下のようになっています。
① 陸地が水と接する所。みぎわ。みなぎわ。
② 船が水面と接する所。喫水(きっすい)線。今昔物語(5)「沈む程のーに済を書きて注(しるし)を付けつ」
水際対策の意味とは?
普段、わたしたちがニュースで見聞きする 「水際」というのは上述の「上陸する直前」という意味です。
『水際対策』の意味は、上陸してくる「敵」を水際(上陸する直前)で撃滅するような対策のことをいいます。
「敵」というのは人を指す場合もありますが(例えばテロリストとか)
病原菌や害虫、違法薬物、大麻なども対象です。
港や空港などで、感染症や有害生物などの上陸を阻止するために実施される検疫や検査などの対策のことを指して『水際対策』というわけです。
このように「国に入ってこないようにする」という対策を『水際対策』と呼ぶのが一般的ですが
企業がサイバー攻撃に備える対策に対して『水際対策』と呼ぶなど、比喩的な使い方をすることもあります。
水際の由来とは?
『水際』は「水面と陸地が接するところ」という意味です。
このことから転じて「上陸する直前」という意味になりました。
昔は、今のように飛行機がない時代。
外国からやってくる人や物は全て船を使ってやってきました。
よく「水際で食い止める」という言い方をしますが、これはこの交通手段が船だったことが由来しています。
「水際で食い止める」は「水面が陸地と接するところで食い止める」ということで
「侵入させない」=「上陸する直前で食い止める(侵入させない)」
ということになります。
これが更に転じて、「空港や国境など国内に入る直前」のことも「水際」と言うようになったのです。
水際の使い方と例文
『水際』は水面と地面とが接するところを意味しますが、
ここではニュースやビジネスシーンで使う「上陸する直前」や「国内に入る直前」を意味する言葉としての使い方をご紹介しますね。
『水際』は必ずしも島国など海に囲まれたエリアで使う言葉ではなく、
たとえ地続きのところでも、他国から自国に入る直前のことを指して『水際』と表現することもあります。
『水際』は「水際対策」、「水際作戦」といった使い方がよくされます。
「防衛の基本方針とは上陸中の敵を攻撃して撃滅する水際作戦だ」
「今さら水際で攻防しても無駄だ」
「水際対策が功を奏して、ヨーロッパの二の舞は避けられた」
「水際対策を実施しているが今の時点でどこまで効果があるかわからない」
「彼らの任務は水際で密輸を防止することだ」
「この条例は外来種を水際で防止するために必要な対策となっている」
「結果としてあの水際対策だけでは不十分だったと言える」
「守備隊の主力として激戦を続けたが、あの水際戦闘では大打撃を受けた」
「水際作戦のため主力を海岸に結集したが裏をかかれた」
「テロリストの上陸を待って水際で仕留めるのが賢明だ」
瀬戸際と水際の違いとは?意味と由来 使い方の文例をわかりやすく! まとめ
『瀬戸際』と『水際』の違いをカンタンに言うと
- 『瀬戸際』は「物事の分かれ目」
- 『水際』は「上陸する直前」
となります。
『瀬戸際』の意味は「物事の成功・失敗の分かれ目」のことです。
成功か失敗か、勝つか負けるか、生きるか死ぬかなど、運命の分かれめを言います。
『水際』は水面と陸地とが接するところを意味します。
新型コロナウイルスが話題になった頃の報道では『水際』や『水際対策』といった言葉がよく使われました。
中国で感染者が激増し、その影響が日本に及ばないようにするためにどうしたらよいか、というフェーズの時は
入国制限や渡航制限をするか、
港や空港でのチェックや検疫をするか
といった案に対して『水際』・『水際対策』・『水際作戦』といった使い方をしました。
「敵」が外国から日本に入る直前のことを『水際』と言っていたわけです。
日本国内で新型コロナウイルスの感染が確認されてからは、感染が収束に向かうかどうかの『瀬戸際』という言葉を頻繁に見聞きするようになりました。
感染が収束を超えて終息に向かう瀬戸際は今なのかもしれません。
ひとりひとりが責任ある行動をとるように心がけたいですね。
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