ひな祭りの定番、はまぐりのお吸い物は縁起物。
由来を知ればスープパスタもOK、
はまぐりの栄養を丸っと頂く簡単レシピも紹介。
貝殻に託す親の願い、
先人の知恵が詰まった伝統料理を理解して桃の節句をお祝いしよう!
昔も今も、子を思う親の気持ちは不変です。
ひな祭りのひな人形とはまぐりの関係に由来が
桃の節句(もものせっく)のこの時期、貝類は旬で一番美味しい季節です。
ひな祭りの代表的な料理のひとつに、「はまぐりのお吸い物」がありますね。
はまぐりのお吸い物は古くから伝わるお祝い料理ですが、他にも貝はあるのに、なぜ、ひな祭りに限ってはまぐりなんでしょう。
実はこの伝統料理、はまぐりのお吸い物には昔の人ならではの情緒ある意味がこめられているんです。
ひな祭りとはまぐりの由来とは
ひな祭りの起源は古く、はるか平安時代にまでさかのぼります。
◇ひな祭りの起源について詳しくはこちら
・ひな祭り由来と起源に見る桃の節句との違い江戸時代の五節句
平安時代、はまぐりの貝を使った『貝合わせ(かいあわせ)』という遊びがありました。
貝合せとは今でいうトランプの「神経衰弱」のようなものです。
はまぐりは二枚貝。
そのはまぐりの貝をばらして、対になる貝を見つけるのです。
はまぐりの貝は、対になっている同じ貝殻でないとピッタリ合わないのでペア探しの遊びに使われたんですね。
また、他のはまぐりの貝殻とは絶対に合うことがないというこの性質から、はまぐり自体が女性の貞節を表すとも。
このようなことから、はまぐりは「夫婦和合・夫婦円満」の象徴とされて、仲の良い夫婦を指すようになります。
ひな祭りは女の子の成長と幸せを願う行事です。
昔は、女の子の幸せといえば一も二もなく「結婚」!
我が子が無事に育ってくれたなら、次に望むのはかわいい娘の結婚です。
何が何でも結婚して幸せになってほしい、という親心。
親は、はまぐりの貝殻に
「生涯一人の人と添い遂げて幸せな人生を送りますように」
と願いを託し、はまぐりのお吸い物は結婚式にも縁起物として出されるようになりました。
貝桶はひな人形の嫁入り道具はまぐり一年分
このように、はまぐりが仲の良い夫婦の象徴で、一生一人の人と添い遂げるようにという願いが込められていたことから、江戸時代になると、なんと嫁入り道具としても登場します。
上流階級に限られていましたが、『貝桶(かいおけ)』という嫁入り道具です。
その昔、上流の女性は嫁に出るとなかなか親と会えなかったり、離婚もできませんでした。
なので、娘が嫁ぎ先で淋しい思いをしないようにと、約一年分のはまぐり362個(旧暦の一年で換算)の貝殻に豪華な絵を描いたものを、『貝桶』と呼ばれる豪華な箱に入れ、一番に嫁ぎ先の家に運び込んだと言われています。
娘が良い相手と巡り合い、一生添い遂げて幸せになってほしいという親心が形となって花嫁道具のひとつとなったのです。
今でも、ひな人形を飾る際、段飾りでは貝桶をお道具の一つとして飾るおうちもあります。
ひな祭りにはまぐりのお吸い物をいただく習慣や、七段飾りなどの貝桶。
今も昔も、娘を思う親の気持ちは変わらず、形となって受け継がれているんですね。
ひな祭りのはまぐりはなぜお吸い物なのか
はまぐりの旬は2~4月。
桃の節句、ひな祭りの時期は旬の真っただ中ですね。
焼はまぐり、煮はまぐり、たくさん美味しい食べ方があるはまぐりですが、なぜはまぐりのお吸い物がひな祭りのご馳走として食されてきたのでしょうか?
実は、はまぐりをお吸い物でたべるというのは先人の知恵から受け継がれているのです。
はまぐりは栄養価がとっても高く滋養に富んだ食材です。
昔の人は、栄養価の高いはまぐりを丸ごと食べるには、お吸い物が一番適していると知っていたんですね。
焼はまぐりも美味しいけれど、熱々のエキスが貝からこぼれたりで丸っと全部いただくのはちょっとむずかしい。
はまぐりの栄養を一滴も漏らさずいただくのはお吸い物がベストだったわけです。
はまぐりの優秀な栄養素と効能
はまぐりは、海の中に溶けているミネラルやビタミンなどの栄養素を殻の中に閉じこめた、栄養価がとても高い食材です。
話題の亜鉛やグリシンも豊富なほか、コレステロールを抑制したり肝機能を向上するなどの健康面にも効果を発揮すると言われています。
はまぐりの主な栄養素
■ グリシン:筋肉の強化、美肌効果
体の組織を支えているコラーゲンの30%はグリシンを成分として出来ています。
グリシンは筋肉を強化する働きや、肌の潤いやハリを保つ高い美容効果があるとされ、脊髄や脳幹に多く含まれている成分。
中枢神経の機能になくてはならない物質がグリシンです。
■ アスパラギン酸:疲労回復、代謝を高める
アスパラギン酸は、体の中の不要物を体外に排出し、疲労回復や不眠症の改善に効果があると言われています。
アスパラギン酸にはマグネシウムやカリウム、カルシウムなどのミネラルを全身に運ぶ働きがあります。
スタミナを増す効果があるとされ、ドリンク剤などにも使用されていますね。
■ タウリン:肝機能の向上、疲労回復・眼精疲労の改善
近頃、肝機能を強化するということで注目されている栄養素です。
ハマグリは食品の中では牡蠣に次いで多くのタウリンが含まれています。
体の細胞を正常に戻そうとする働きを助ける役割があるので、積極的に取り入れたい成分のひとつ。
PCやスマホで目を酷使する現代人の疲労回復にうってつけということですね。
■ 亜鉛:美肌効果、動脈硬化の予防
亜鉛は、タンパク質を作ってくれるのでニキビや肌荒れを防ぐ美肌効果が期待されます。
また、動脈硬化を防ぎ、肝機能を回復させる働きがあるともいわれます。
アルコールの分解にも使われる成分なので、お酒を飲む人は積極的に摂りたい栄養素です。
亜鉛はビタミンCといっしょに摂ることで吸収率が高まります。
■ グルタミン酸:脳機能の活性化、排尿効果
グルタミン酸は、うまみ成分として知られている栄養素ですね。
脳の神経細胞の栄養素となる成分で、脳を活性化してストレスなどへの抵抗力を高め、気分の落ち込みや疲労を軽減する働きがあるとされています。
体内にアンモニアが入るのを防ぎ、体の外に排泄する効果があります。
■ カルシウム:丈夫な骨を作る
ハマグリにはカルシウムが牛乳よりも多く含まれ、さらにマグネシウムも牛乳の約8倍も含んでいます。
ハマグリを食べることでカルシウムとマグネシウムをバランスよく充分にとることができますね。
■ ビタミンB12:貧血予防
悪性貧血を防いだり、神経細胞内の核質やタンパク質を合成、修復する役割を担っている栄養素。
■ 鉄分:貧血予防
血液中にある赤血球のヘモグロビンを作る材料。
ヘモグロビンは酸素を運搬する役割があるため、貧血の予防に効果があると言われています。
こうして見ていくと、はまぐりは女性にとってとても良い栄養素が多く含まれています。
良質なたんぱく質を含むほか、カルシウム、マグネシウム、亜鉛などのふだん不足しがちなミネラルが豊富ですね。
高たんぱくで低カロリーなのもはまぐりの特徴のひとつ。
特に旬を迎える早春には栄養価がパワーアップするので、基本のはまぐりのお吸い物と、はまぐりの栄養素を余さずいただけるはまぐりのパスタをご紹介します。
ひな祭りレシピはまぐりのお吸い物と簡単スープパスタ
はまぐりはアミノ酸が豊富でうまみ成分がぎゅっと詰まっているので、調味料との相性が良く、他の食材とも合わせやすい食材です。
ただ二枚貝はノロウイルスを持っている可能性があるので、必ず火を通して食べるようにしましょう。
はまぐりの栄養素で一押しがタウリンです。
疲労回復に効果のあるタウリンは水に溶けやすいので、汁ごと食べられる料理法がおすすめ。
はまぐりを汁ごと丸っといただけるはまぐりのお吸い物と、我が家の人気レシピ、はまぐりのスープパスタをご紹介しますね。
はまぐりのお吸い物のレシピ
はまぐりのお吸い物のお出しは、はまぐりと昆布のみで作ります。
とても簡単に作れますよ。
・はまぐり … 8個 (200~300gほど)
・水 … 3カップ (600ml)
・昆布 … 5~7㎝角1枚(約5~10g)
・薄口醤油 … 大さじ1強
・酒 … 大さじ1~2
・塩 … 少々
・木の芽または三つ葉、せりなど … 少々(用意できれば)
■ 作り方
1. はまぐりは海水程度の塩水(3%)に入れて砂抜きをし、よく洗う。
2. みつばを使う場合は、茎を軽くお湯にくぐらせてから結んでおく。
3. 鍋に、はまぐり・昆布・分量の水入れて煮立て、アクを取る。
4. 沸騰する少し前からアクが出てくるので、お玉でアクをすくい取る。
5. 沸騰したら昆布を取り出す。アクがまだあれば続けてすくい取る。
6. はまぐりの口が全部開いたら、いったん取り出す。
7. 鍋の汁をキッチンペーパーなどでこす(省略も可)。
8. 鍋に(7)の汁を戻し入れて火にかけ、酒・薄口醤油・塩を加えて調味する。
9. お椀に(6)のはまぐりを殻ごと入れ(8)の熱い汁を注ぐ。
あれば、仕上げに(2)のみつばをあしらう。
POINT!
はまぐりのお吸い物は昆布と一緒に貝のうま味を引き出すのがポイントです。
『あらかじめ鍋で、はまぐり・昆布・分量の水を合わせ、冷たい状態からじっくり火にかける』
これが重要なポイント。
弱火から少し火を強くしたくらいの火加減でじっくり火を入れてゆきます。
はまぐりのスープパスタ簡単レシピ
スパゲティはお好みの太さを使ってください。
スープと絡めるので固めに茹であげるのがポイントです。
はまぐりからの塩分もあるので、塩は味を見ながら 調整してくださいね。
・はまぐり … 8~10個 (あさりでも可)
・スパゲティ … 200g
・たまねぎ … 1/2個
・イタリアンパセリ … 適量 (なくてもOK)
・酒 … 大さじ3強
・バター … 大さじ1~2
・しょうゆ … 小さじ1/2
・塩 … 少々
・こしょう … 少々
・水 … 400cc
■ 作り方
1. はまぐりは海水程度の塩水(3%)に入れて砂抜きをし、よく洗う。
2. たまねぎは薄切り、パセリはみじん切りにする。
3. 鍋に湯を沸かし(分量外)、塩を少々入れ(分量外)、スパゲッティを茹で始める。
4. フライパンにバターを熱し、強火でたまねぎがしんなりするまで炒めたら、はまぐりを入れ、酒を加える。
5. ひと煮立ちしたら、水を加えてフタをし、はまぐりの口が開くまで中火にかける。
6. フライパンに茹で上がったスパゲッティを加え、しょうゆ、塩、こしょうで味を調える。
7. 皿に盛りつけ、パセリを散らす。
お好みで、具材に海老や菜の花などを加えても美味しいですよ。
ひな祭りになぜはまぐりのお吸い物?レシピでわかる由来と栄養 まとめ
はまぐりは、良縁・夫婦円満の象徴。
ひな祭りでは女の子が幸せな結婚ができるようにとの願いを込めて、はまぐりをいただいたく習慣ができました。
昔の人が、心から娘の幸せを願う気持ちが現在にも受け継がれているっていうのは感慨深いものがあります。
ちなみに。
はまぐりの名前の由来なんですが、貝の形が栗に似ていることから、
「浜辺の栗 → はまぐり」
と名づけられた、という説があります。
はまぐりも栗も、日本古来の美味しい食材ですね。
◇ はまぐりの話題 こちらもどうぞ
・はまぐりの砂抜き基本のやり方と砂出しを短時間でする裏技 保存方法は?
・スーパーのはまぐり砂抜きは必要ないのか砂出し済みでもする理由は?
・はまぐりが開かない時は食べれる?生から加熱と冷凍の場合の対処法
◇ 記事中でご紹介した関連記事
・ひな祭り由来と起源に見る桃の節句との違い江戸時代の五節句