物言えば唇寒し秋の風とはどんな意味?由来でわかる使い方と例文

物言えば唇寒し秋の風とはどんな意味?由来でわかる使い方と例文

『物言えば唇寒し秋の風』とはどんな意味?

どのような時に使う言葉?

類語はある?

由来はどこから?

その疑問、解消します!

『物言えば唇寒し秋の風』の元ネタ、

俳句が教訓めいたものになった原因、

本来の解釈と異なった理由も含めて、

わかりやすくお伝えします。

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物言えば唇寒し秋の風の意味とは?

物言えば唇寒し秋の風とはどんな意味?由来でわかる使い方と例文

日常使われていることわざや慣用句には
「わかるようでわからない」
というか、文字だけだと
「さっぱり意味がわからない」
といったものがありますよね。

わたしの中でそんなひとつが

物言えば唇寒し秋の風(ものいえばくちびるさむしあきのかぜ)』

でした。

わたしが初めてこの言葉を知ったのは
学生バイトで働いていたレストランでのこと。

ホールスタッフのひとりが、
忙しい週末に風邪で休んだ同僚に対して
批判めいたことを言ったとき、店長が

物言えば唇寒しだよ。さあ、頑張ろう!」

と、とりなしたのです。

『物言えば唇寒し秋の風』とは、

「余計なことを言えば、そのためにかえって災いを招く」

という意味です。

「人の悪口を言えば、なんとなく後味の悪い思いをする」

というたとえでも使われます。

『物言えば唇寒し秋の風』の類語

よく似たことわざに

口は災いの元

雉(きじ)も鳴かずば撃たれまい

があります。

『口は災いの元』は、
言葉は災いの元になりかねないから、
十分に慎むべきだという戒めです。

『雉(きじ)も鳴かずば撃たれまい』は、
余計なことを言ってしまって、
自ら災いを招くことを意味します。

英語でいうと

Silence is golden

→ 「沈黙は金(なり)」

といったところでしょうか。
何も言わない方が賢明な時がある、
といった意味合いもありますが
「口は災いの元」
にも近いかもしれません。

物言えば唇寒し秋の風の由来は?

物言えば唇寒し秋の風とはどんな意味?由来でわかる使い方と例文

『物言えば唇寒し秋の風』を辞書でひくと
広辞苑には以下のように載っています。

○物言えば唇寒し秋の風ものいえばくちびるさむしあきのかぜ
(芭蕉の句)人の短所を言ったあとには、淋しい気持がする。なまじ物を言えば禍を招くという意に転用する。

芭蕉の句、とありますね。

芭蕉とは江戸中期の俳人、
松尾芭蕉(まつおばしょう)のことです。

「古池や 蛙飛び込む 水の音」

なら聞いたことがあるのでは。

芭蕉は俳句の大家として知られ、
紀行録『奥の細道』は多くの日本人に
影響を与え、旅に生きた人としても有名です。

もともと、『物言えば唇寒し秋の風』は
その芭蕉が詠んだ俳句
です。

それが広まってゆくうちに

「余計なことを言えば、そのためにかえって災いを招く」

と解釈されるようになったのです。

実際の芭蕉の読み心は
教訓じみた句でもなければ、
他人に対して読んだ句でもなく

ただ秋の情景に対する
芭蕉の自然な感想、
もしくは独り言のようなもの。

『物言えば唇寒し秋の風』を今の口語でいうと

なにかしゃべると、冷たい秋の風で唇が寒いことよ

といった感じです。

芭蕉の作品をまとめた、
『蕉翁句集(しょうおうくしゅう)』によれば、

この句は元禄4年(1692年)に作られ
同じ年には、もうひとつ「秋風」を
詠んだ句があります。

「秋風や 桐に動いて つたの霜」

こちらも秋の情景をうたったもので、
教訓じみたものではありません。

同時期の作風からいっても、
現代のわたしたちが解釈する意味の

「余計なことを言えば、そのためにかえって災いを招く」

とはならないのですが、
どうして解釈が転じていったのでしょう。

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物言えば唇寒し秋の風が教訓になった由来とは?

物言えば唇寒し秋の風とはどんな意味?由来でわかる使い方と例文

一般的に
『物言えば唇寒し秋の風』は

「人の悪口とか、自慢話とか、
言わないほうがよい余計なことを口にすると、
思いがけない災いを招くことになるから
口を慎め」

といった意味で使われています。

ですが、前述のように元は
秋の情景を詠んだ芭蕉の俳句です。

この俳句が教訓めいたものになったのは
この句に

人の短をいふ事なかれ 己が長をいふ事なかれ

という『前書き』がついているからだ、
と言われています。

これは、他人の短所や自分の長所を
軽率に言うべきではないという意味です。

「人の短をいふ事なかれ 己が長をいふ事なかれ」
「物言えば唇寒し秋の風」

と続くと、確かに

「人の短所や長所をあげつらって言うと、なんだか虚しい気がする」

といった感じになりますね。

言わなきゃよかった、
という思いにとらわれたり、

そうした思いから余計な災難を自ら招く

となるのも頷けます。

この前書き自体は元禄9年(1697年)に
上梓された 『芭蕉庵小文庫』 において
追加されたものです。

ですが、
芭蕉が亡くなったのは元禄7年(1695年)。

『芭蕉庵小文庫』 は、中村史邦
(ふみくに/本名:中村荒右衛門)
という芭蕉のお弟子さんによって
師の死後に編纂されたものです。

つまり、
中村史邦が前書きを加えたことで
俳句が人生訓のような意味となり
解釈されるようになったわけです。

個人的には、芭蕉の作風から言っても
人に何かを諭すような教訓を詠むとは思えず、

芭蕉本人としては、純粋に

「秋の寒さをこんなところにも感じた」

と伝えたかったのではと思います。

物言えば唇寒し秋の風 使い方と例文 

物言えば唇寒し秋の風とはどんな意味?由来でわかる使い方と例文

『物言えば唇寒し秋の風』を

「余計なことを言うと災いの元になる」

という意味で使う時の例文をご紹介しますね。

「秋の風」を省略して、
『物言えば唇寒し』という使い方もよくあります。

「黙ってたほうがいい。『物言えば唇寒し秋の風』って言うだろ」

「政府への忖度で役所内は『物言えば唇寒し』となるわけだ」

「『物言えば唇寒し』とばかりに誰一人発言しない」

「昨夜は言いすぎた。『物言えば唇寒し秋の風』とはまさにこのこと、反省してる」

「つまらないことを言って大炎上、『物言えば唇寒し秋の風』が身にしみた」

「喧嘩して言いたいことを言ったが、『物言えば唇寒し秋の風』というように、言ってすっきりするどころか、嫌な気持ちだけが残ったよ」

物言えば唇寒し秋の風とはどんな意味?由来でわかる使い方と例文 まとめ

『物言えば唇寒し秋の風』とは、

「余計なことを言えば、そのためにかえって災いを招く」

という意味で、

「人の悪口を言えば、なんとなく後味の悪い思いをする」

というたとえでも使われます。

元は江戸中期の俳人、
松尾芭蕉が詠んだ俳句ですが、

お弟子さんが

「人の短をいふ事なかれ 己が長をいふ事なかれ」

という前書きをつけたことで、
教訓めいたものに解釈されるようになり、

「余計なことを言うと災いの元になる」

といった意味で使われるようになりました。

『物言えば唇寒し秋の風』には
秋の情景を詠んだ俳句としての意味と
教訓としての意味があります。

由来と一緒に覚えておくとわかりやすいですね。

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